帝国の現状
カイがSランクに上がった頃。
帝国貴族の考えは2つに割れていた。
1つはウェンテライウ王国に一刻も早く攻め込むべきという考え。
もう1つは周りの小国から攻めるべきという考え。
もちろん新皇帝は早く攻め込むべきという考えである。
旧皇帝だった場合は皇帝がその考えという時点で決定出来ていたのだが、新皇帝は若く、皇帝になったばかり。
貴族達からは当然のごとくなめられていたのだ。
どちらも他国に攻めるという考えではあったので戦力を集めることは出来たが中々何処に攻め込むかが決まらない。
これは新皇帝に幻惑をかけていたリーセスにも予想外のことだった。
リーセスの考えでは強欲である帝国貴族達はすぐにウェンテライウ王国を攻める事に賛成し、すぐに進軍することが出来るというものだった。
そしてその戦争であれが目覚め……………。
この状況ですぐに進軍は無理そうだということを理解したリーセスは貴族1人1人に不自然にすぐに意見を変えないようにゆっくり幻惑をかけていくことを決めるのだった。
夏休みも半分位過ぎた頃。
カイはマイとの生活を謳歌していた。
理由の1つはSランクになったことで1年に1度依頼を達成するだけで会員でいられるようになったこと。
元は1ヶ月に5件の依頼を達成しなければならなかったので相当楽になった。
もう1つの理由はレクスが婚約者と過ごすということで極端に護衛の仕事が減ったこと。
それでも護衛はいるだろうとも思ったが、僕としてはマイとの時間が増えるのは嬉しいので気にしないことにした。
レクスも魔法は僕の次に強いからね。
心配しなくても大丈夫だろう。
というわけで今も膝の上のライを撫でているマイと談笑している。
「これで夏休みも半分終わったのか。
マイは何かしたいことはないの?」
思っていたより仕事が少なくなったので何かないか聞いてみた。
「う~ん。特にはないかな。カイ君は?」
「この世界の娯楽は少ないからな~。」
「カイ君の前世の世界では娯楽がたくさんあったの?」
「たくさんあったよ。例えば……………」
こうして徐々に前世の娯楽の話になり、結局今後の予定は決まらなかった。
その話の間ライは撫でられて気持ちが良いのか所々記憶を覗いて知っていてその話に興味がないのかずっとウトウトしていた。
そして話が終わる頃には膝の上でぐっすり眠っていたのだった。