291話
ベリアルは手始めとばかりにサテュロスに襲いかかる。
それを意図も簡単に受け流し、反撃とばかりに拳を繰り出す。
しかし、ベリアルは受け流された時点で後ろに避けていたため当たることはない。
「あなたは周りに植物を生やさないと力を発揮しなかったはずですが、ブラフですか?」
「そんなことないぜ、生えてるじゃねえかそこら中に」
サテュロスがそういうが、視界に植物は一切ない。
しかし、強さ的に本当に生えているのだろうとベリアルは推測した。
今のサテュロスの力はこの世界の上限ギリギリのライン。
この世界の者がそこに至るためには厳しい条件が付きまとうはずである。
植物を生やす以外にも何か条件がないと至らないレベルである。
実際ベリアルの推測通り、サテュロスは植物を周りに生やしていた。
しかし、それは実態を持たないもの。
普段は実体化して初めて植物という判定となるのだが、この非常事態に実体を持たずとも植物と判定されることになった。
ちなみに今回だけである。
◆
サテュロスはここに来る前にとある場所に寄り道をしていた。
「ようやく来たね。君に仕事が来るとは思ってなかったんだけど」
神様はなぜこうなったのだろうと言わんばかりに首を捻る。
「あのドラゴンは死神が来たときに誤作動してそのまま制御がきかなくなったんだろ?」
「一応ソラが封印してたけどそれが解かれた時は君の出番かもとは思ってたよ」
「念のためにこれまでの情報を渡してくれるか?」
久しぶりの再開ではあるが、緊急事態でもあるため長々と話している場合ではない。
「こんなところでしょ。あ、君が最大限の力で戦えるようにルールを変えといたから」
「獣化も最大でして良いんだよな」
「もちろんだよ。この世界の守護者として存分に働いてきてくれ」
「偉そうに・・・・・・まあ、最古参としても守護者としても異物は許せないからな」
こうして、神から初めて守護者としての異物排除を命じられたのだった。