287話
「さて、どうなることかな」
相も変わらず楽観的な神様とは裏腹に僕は焦っていた。
リーセスの最後の一撃、それがあの約束の一撃であることは分かった。
「何を焦ってるんだい?」
神様に聞かれ、正直に事の次第を伝える。
すると、神様は声をあげて笑いだした。
「幻惑魔法なんて端から存在しないよ」
意味が分からなかった。
「リーセスに死神が何て言ったか覚えてる?」
「目の前で起きた事は全てフィクション」
「その通り、リーセスがこれまで使っていた幻惑魔法はそのもの事態がフィクションだったんだよ。
その全ては死神の目から得た情報で死神が遠隔で操っていたもの。
この世界に幻惑魔法なんて存在しない。
君が使おうとしても使えなかった理由だよ」
確かに、この世界の魔法は知っているものは全て扱う事が出来た。
幻惑魔法以外は。
思えば幻惑魔法と良いながら毒やら麻痺やら出来るのはおかしい。
幻惑という言葉からの効果が多く、それらを同時ではなく選択して使う。
他の魔法から考えれば異質なものだった。
だとすると、なぜ幻惑魔法による身体強化を死神が許したのだろうか。
それにより大幅に戦力が上がるというのに。
「不思議かい?それにはリーセスには動けなくなってもらわないといけなかったんだよ」
疑問は残ったままだ。
それに答えるように神様が続ける。
「ベリアルがリーセスの村の人間を全て殺した理由はなんだと思う?」
危機的な状況にも関わらず考える時間が与えられた。
「・・・・・・リーセスがいたという痕跡を消したかったから?」
「君って意外と頭良いよね」
意外と・・・・・・まあ、意外となのか。
「君はリーセスが自分と似てるって思ったことはあるかい?」
「本質的な所は似てるかも」
これまで話したりしてきて、それは感じていた。
僕もリーセスも寂しさが原動力にある気がしている。
リーセスは寂しかったから口調を大阪弁っぽくして明るく振る舞った。
僕も転生した時彼女が欲しいと思っていたのは、寂しさから抜け出したいと思っていたからだ。
そして、また寂しさを感じないようにこの世界を守ろうとしている。
「君とリーセスって世界軸は違うけど、元は同じ人物なんだよ」