279話
ゲームで言うところの3人称視点のような感覚で自分の動きを監視している。
それ以外は特段することがない。
体が勝手に動くため、それを監視するだけの眠たくなるような仕事。
それも、自我の半分は野生の目に持っていかれているわけだから余計に意識が遠くなりそうになる。
それをなんとか持ちこたえているのが今の状態だ。
死神の目の方は対人戦特化であり、小さき天使の体である死神には到底効かない。
暴走した状態の時は何故か死神の目まで同時に発動していたようだけど、それをするメリットは今はない。
それどころか、制御しきれなくなる可能性があるため、デメリットになり得るだろう。
◆
「あれは・・・・・・大丈夫なのか?」
レクスは離れた場所で戦っているカイの様子を見てそう言う。
彼の知っているカイの動きではなかった。
中身が全くの別人のようになった動きに戸惑いを隠せていない。
それに、異様な雰囲気を醸し出す野生の目、それに不安があった。
「もしもの時は私がなんとかします」
マイも完全に信じることは出来ていないようだ。
それだけ野生の目は異様な雰囲気を醸し出していた。
「やあ、遅れて悪かったね」
重い空気の流れる中、突然新たに1人現れた。
「君たちがここに向かったのは精霊達からの情報ですぐに分かったんだけど、他の呼び出しを食らっちゃってね。ただ、それで君たちに伝えないといけないことがあるから急いで来たんだよ」
その1人とは精霊王である。
レクスが今1番会いたかった存在である。
「単刀直入だが、聞きたいことがある」
「野生の目、についてでしょ?大丈夫、それも伝えに来た情報の1つだ。それと、この話は現実味がないだろうけど、とある筋から取り寄せた情報だから、事実。それを分かった上で聞いてほしい」
◆
「まず、君が聞きたいという野生の目について。あれは死神の目と同じように呪いだよ。
もちろん、リーセスの死神の目じゃなくてカイの死神の目だよ?
本当は初めから知っていたんだ。でも、言えなかった。だから、まずその言えなかったものが言えるようになった理由から話すよ」
そう言って、精霊王は理由を語り始めたのだった。