276話
「どういうことや、今までのこと全てフィクションやった言うんか?」
リーセスも同じような事を思ったのだろう。
「正確に言えば、人を殺す瞬間一足先に私が殺していた。それに、幻惑魔法で当たった感覚を持たせていたが、お前の攻撃は当たってすらない」
全員が驚いている様子だ。
「話が長くなったな。お前達に2つの選択肢をやろう。
1つは私にこの世界ごと壊されること。もう1つは私がこの世界を抜け出した後にやって来る天使に世界ごと滅ぼされること。
どちらを選んだにしても死は免れないが、私の方が優しいとだけ教えておこう。
今から話し合っても良いぞ」
◆
「ここは僕に任せてくれないかな」
皆にそう確認すると全員頷いてくれる。
「僕たちはもう1つの選択肢を選ぶ。ここでお前を倒す」
例え、どんなやり残したことがあったところでこの世界に住む人々を殺しても良い理由にはならない。
それが、近い将来そうなる運命であったとしても、命を奪うことには変わりない。
だから、どちらの選択肢も選ぶことは出来なかった。
「そうか、じゃあ・・・・・・かかってくるといい」
死神はそう言いながら死神の鎌が出現し両手でそれを持つ。
「初めから全開で行くで」
おそらくリーセスは幻惑魔法での身体強化を初めからフルで使うようだ。
僕も出し惜しみは出来ない。
◆
マイはカイの様子をしっかり見ていた。
カイが暴走したときに止められるのは私しかいない。
そう思い、注意していた時、カイの雰囲気が一変し、焦る。
そう、それはまるで野生の目で暴走していた時と同じものだ。
すぐに駆け寄ろうとしたが、カイがこちらを振り向き目線を送ってくる。
大丈夫ということなのだろうが、その両目はどちらも野生の目となっていた。
◆
5人は示し合わせたように動き始める。
元は対魔王用だったのだが、ほぼ同じ戦略で良いだろう。
前衛は僕とリーセス。
そして、魔法での補助がレクス、ノイン、レイ。
3人それぞれ優先順位が違い、レクスは攻撃、ノインは僕たちの強化、レイは回復となっている。
マイは、出来るだけ万全な状態で待機となっていた。
それは、僕が万が一暴走したときのためである。
といっても危なくなれば魔法の補助に入る予定である。