274話
「どういうことだ?」
レクスが聞く。
いずれこの世界最大の国の国王となる身であるため特に聞き捨てならなかったのだろう。
「言葉の通りだ。本来なら10年位前にこの世界から抜け出す力は得ていた。それでも留まったのはこの世界への同情でしかない」
「同情、だと・・・・・・」
「良い機会だ。教えてやろう。この世界は序列的に下に近い。だからこそ私はここに堕とされたのだがな」
僕たちはあまり理解出来ない。
世界に序列があることも序列化されるほど世界があることも初めて知るものだ。
「堕とされた?」
「そう、天使によってな。この世界は元々もっと前に終末を迎える予定だった。
お前なら知ってるだろう?この世界の神が寝ていたことを」
確かにソラからそう聞いた。
「神が眠る。つまり、この世界は終末を待つのみの状態にまでなっていた。それが終末を迎えなくなった原因が私だ」
そこまで言うと徐に魔王の元に近づき、地面に落ちる。
すると、魔王の体が動き出す。
「こんな風に体を乗り移ることが出来る以上、私は不滅に近い。
だから、この世界まで堕とされた」
魔王の体でそう話した後、魔王の体が力なく倒れ、小さき天使の体が再び宙を浮き動き始める。
「つまり、私がこの世界を抜け出すとこの世界に存在する価値が無くなる。
さらに、抜け出そうとする私をこの世界に留めさせるために天使共がこの世界に構わず攻撃してくるだろう。もし、それで終末を迎えなくても、また、神が眠りにつき終末を待つ運命を辿る。
これがこの世界の未来だ」
突然突きつけられる終末宣言。
本当かは不明であるが、ここまでの話が全て嘘とは考えにくかった。
「ちなみにその言い方やと違う世界おったんやろ?そこは序列的にどこら辺やったんや?」
リーセスはいつもの口調で聞く。
おそらく、粗を見つけて嘘だと信じたいのだろう。
「一番上だ。最も、そこが一番天使に拘束されて、自由に動けないのだから皮肉なものだ」
天使はイメージ的に良いイメージがあるが、死神という真逆のような存在からすると、悪いイメージを持つのだろう。
「じゃあ、ここを抜け出してどこ行くんや?」
迷わず返答する死神を見て、全く違う質問に変える。
「元々いた世界だ。そこに戻るまで凄く時間は掛かるがな」
「何で戻りたいんや?時間も掛かるし自由じゃないんやろ?」
リーセスの言うことは的を射ていた。
確かに、その世界に帰る位ならここにいた方が良いだろう。
最もそうしたところで結局犠牲者がたくさん出てしまう訳だが、それでも終末を迎えるよりは断然良いのかもしれない。
それに、これが粗だとするとこの世界は終末を迎えるという話は嘘の可能性が出てくる。