269話
家に帰ってきてから数日、何をなすにも頭の片隅では色々と考えてしまう日々を過ごしていた。
ただ、住み慣れた家にいるだけで少し気が楽になるもので・・・・・・
「ふぁ~ぁ」
「ふぁ~ぁ。カイ君のあくびにつられちゃった」
そう笑うマイと顔を会わせて笑いあう。
「そういえば、明日から学校だっけ?」
「そうですね」
マイは少し残念そうにしている。
それもそうだろう。
何て言ったって修学旅行があんな形で終わってしまったのだから。
これは、卒業後にでももう一回旅行に行こうかな。
そんな事を考えている間もやはり頭の片隅では違うことを考えている自分がいた。
◆
その頃、
「本当に行くの?」
「行かないかんやろ」
レイはリーセスを説得しようとしていた。
レイが何より恐れているのは再びリーセスが死神に操られてしまうこと。
それよりも最悪なのはカイまで操られてしまうことだが、リーセスは以前操られていたため余計に心配なのだ。
その不安と共に説得を試みるが、
「僕が行かんと他に誰が行くんや?」
全員がカイ一人で行かせることには反対していたため、そうなると自分が行くしかない。
それがリーセスの考え方であった。
これには実力的な面もあるが、前世の記憶がある自分の方が精神的に長く生きているため、犠牲になるのなら自分が、という自己犠牲の精神も混ざっていた。
そして、これはカイも同じだろうとリーセスは考えている。
その点から自分が行くのが最善である。
もし操られてしまった時は、カイにとっては酷かもしれないがカイに殺してもらおうとまで考えていた。
無論、操られに行くわけではないが、何時も最悪の想定をしていなければならない。
これは操られている時に学んだ知識であった。
もちろん、リーセスの頭の中にはカイが操られてしまった時にどうするのか明確な案を立てていた。
それを出来るのは自分しかいないため、これもまた自分が行くしかないと言い切れる材料になっている。
「やっぱり、私も行く」
レイはリーセスを行かせないようにするよりも自分が一緒に行こうという思考になっていた。
「なんでそうなるんや?」
「リーセスがどうしても行くって言うから」
レイは自分のことを過大評価しているわけではないが、今この状況でこの取引を持ちかけることで一緒にいることを確定づけようとしていた。
レイは自分が死んでしまうよりも知らない所でリーセスが死んでしまう方が嫌だった。
「・・・・・・まあ、皆と相談して、やな」
皆ならレイを止めてくれるだろうと、そう言うにとどめた。
自分では説得しきれないのは今までの付き合いで分かっていたためである。