閑話 ホワイトデー
とある日。
カイとリーセス、それから二人に呼ばれたノインとレクスが集まっていた。
「それで、何で集まったんだ?」
レクス、ノインは今日やることを伝えられていない。
「「今日はクッキー作りをする!」」
カイとリーセスは声を揃えて言う。
その突拍子もない発言にノインもレクスも戸惑いを隠せない。
「お、お前ら、き、急にどうしたんだよ?」
ノインに至っては珍しくカミカミである。
「・・・・・・最近働かせ過ぎたか?」
レクスはカイとリーセスがおかしくなってしまったと元に戻す方法を考える始末である。
「どうしたも何も今日はホワイトデーやろ?」
ノインに答える形でリーセスが言うが、その発言はホワイトデーを知っている前提の話し方だったためノインもレクスもわかっていない。
「ホワイトデーっていうのは、まあ、女性に日頃の感謝を伝える日、かな?」
本当はバレンタインのお返しをする日と言いたかったのだが、どうもこの世界のバレンタインは前世のバレンタインとは違ったため言い方を変えた。
多分、これも間違ってはいないはずだ。
「なるほどな。その話し方から察するに、それぞれで作って渡したい人に渡そうってことだな?」
勘なのか推測力が高いのかレクスが大体のことを察してくれた。
「その通りや」
◆
こうして始まったクッキー作り。
ここで以外な才能を見せたのが、ノインである。
僕もリーセスもクッキーの基本的な作り方しか教えていないのに魔法で型を作り数種類の形を作っていた。
更に魔法でクッキーの表面を削って何か文字を書いていた。
いくら言っても何を書いたのかまでは見せてくれなかったが、それを皆真似してクッキーを作っていた。
ちなみに僕もリーセスも魔法で型を取ったり、字を書いたりするというのは思い付いていなかった。
◆
「ただいま」
玄関に入り、そう言うと奥から
「おかえり」
と帰ってくる。
マイはちょうどリビングでくつろいでいたためインベントリに隠していたクッキーを体で隠しながら取りだしマイに差し出す。
「えっと、いつもありがとう」
「急にどうしたの?・・・・・・あクッキーだ。ありがとう」
こちらがお礼をしたはずなのにお礼が返ってきた。
「あ、味はそんなに期待しないで。多分店で買ったものの方が美味しいから」
人にあげるもののため一つ余分に作って味見をしていたのだが、前世で食べていたクッキーと比べると何かものたりなかった。
リーセスもその様子だったが、ノインもレクスも美味しいと言っていたためこのまま渡してみようということになったのである。
ただ、自分の感覚ではものたりなかったため不安が残っている。
◆
結果としてはとても美味しかったようでマイは笑顔になっており、こちらも嬉しい気分になっていた。