267話
気がつくと見知らぬ場所にいた。
ちょっと固めのベッドから起き上がると頭の中で何かが暴れているような痛みが襲ってくる。
両手で頭を押さえながらよく周りを見てみる。
あるのはベッドに小さな机、クローゼット。どこかの宿の一室だろうか。
窓から外を見てみる。
知らない町の景色が見える。日の光から夕方位であるように見える。
そこまでしてようやく自分が何をしていたのかを思い出した。
死神と対峙し、何故か死神が勝手に倒れてその原因を調べる前に僕も魔法の使いすぎで気をうしなったのだ。
頭の痛みの原因もその魔法の使いすぎなのだろうと納得する。
◆
少しして小さな机の上に何か紙があることに気がついた。
それには、それぞれの部屋番号が書いてある。
そして、
僕達は先にウェンテライウに戻ります。
リーセスの事をよろしくお願いします。
サイル
と最後に書かれていた。
この宿はサイルさん達がとってくれたようだ。
その紙を手に持ち、マイの隣に書かれた部屋番号の部屋を探しに部屋を出る。
僕の部屋の部屋番号は書かれていなかったため気づかなかったがどうやら隣の部屋だったらしい。
どこかに出掛けている可能性もあるがノックをしてみる。
少しして微かに足音が聞こえ始めちょっと安心する。
扉が開き目が合う。
それで本当に安心したためか頭痛が少し酷くなったように感じたのを悟らせないために顔色を変えないように意識する。
「入って」
なんというか思っていた反応と違う。
しかし、何かあるのかと言われた通り部屋の中に入る。
僕の部屋と同じ配置。
特に変なところはない。
「どうしたの?」
そう言ってマイの方に振り向くとマイに押されて強制的にベッドに座らされた。
「まだ体調が悪いんでしょ?」
どうやら見抜かれていたようだ。
頭が痛いのもそうだが、体の節々も動く度に痛みを感じる。
「ごめん。
マイはいつ起きたの?」
「私は昼過ぎだったかな。カイは?」
「僕はついさっき」
戦闘からほとんど時間を感じずこのような会話をしているため、何か違和感を感じる。
「ちゃんとご飯は食べたの?」
あ、そういえば食べてない。
それを答えようとした時僕の口よりも先にお腹が答えた。
「もう、自分の体を大事にしないと。ほら」
マイはそう言いながらインベントリからハンバーグを出す。
魔法を使いすぎた後は、今の僕のようにひどい頭痛に襲われると共にその状態で魔法を使うとさらにその頭痛が悪化する。
「マイも大事にしないと。でも、ありがとう」
もう少しマイには体を大事にしてもらいたいものだが、それよりも空腹と目の前のハンバーグに敵わなかった。