261話
「創魔様、戻りました」
「勝てそうか?」
現魔王が跪き報告をすると一言聞き返される。
「私ですか?それとも・・・・・・」
「ああ、あの体はもう限界だろうからな。思ったよりも早くこちらがまとまって良かった。それでも、弱いとは言わないが、足止め程度は出来る」
創魔様と呼ばれる小さい生物は今の状況を冷静に分析する。
「ここにたどり着いたら私の番という事ですね。この力も馴染んできましたからどうとでもなります」
創魔という自分より上の存在がいるためか魔王と言えどその言動から魔王感はない。
とはいえ創魔も立ち振舞いはともかく小さいため魔王感はない。
◆
話し合いの結果、僕とリーセスが魔族の大陸に行くということになった。
皆からは反対され、特にマイとレイの抵抗は凄かったが、なんとか二人を巻き込まないように出来た。
恐らく今の力量的に僕とリーセスが最大戦力だ。
元々、リーセスは普通の魔法が使えなかったが精霊王の試練により使えるようになり、幻惑魔法と合わせて強くなっている。
僕も少しづつ成長しているつもりだ。
当然他の皆も成長しているが、僕たちには及ばないというのが正直な感想だ。
いざというときに守れない可能性がある場所に力が通じるか分からない仲間を連れていくのはリスクが高い。
僕一人で行くことも考えたが、その意見を出すとよりマイに反対されそうな気がして、更にリーセスの幻惑魔法はあれば確実に戦術の幅が増える。
そのため提案はしなかった。
それに、その前にリーセスが一人で行くと言い出してレイが涙を流しながら必死に止めていたのを見ていたというのもある。
◆
「そうと決まれば帰ろうか」
僕がそう言うが、賛同したのはリーセスだけだった。
「そもそもここで起きている事件が解決すれば二人は行かなくて済むよな?」
そういうのはノインである。
先程の話し合いではノインは亜人の聖地にいるという方向で決定するとそこまで反対をすることはなくそのまま静かにいるだけだった。
もしかするとこの事を考えていたのかもしれないと今になって気づく。
「そうですよ。この事件を解決してから帰りましょう」
レイも必死にそう言う。
「悪いが、居られるのは修学旅行中だけだ。それで良いなら私は構わない。こちらで解決した方が犠牲者が少なくなるかもしれないからな」
こうして事件解決に向かおうとするのだった。
その元凶が近づいてきているのを知らぬまま。