260話
宿に戻ってから準備を整え旧帝都を出る。
情報を得られなかったためよりウェンテライウ王国から離れて行くことにする。
移動方法は行きと同じで馬車だ。
この中で馬を御せる人はいないため魔方陣とリーセスの幻惑魔法が頼りである。
ウェンテライウ王国は自然と文明の区分がはっきりしていなかったが、旧帝国領ではそれがはっきりとしている。
町の中に植物は生えていないし、町の外もある程度荒野が広がっている。
逆にその荒野を抜けると自然豊かな森となる。ウェンテライウ王国から離れていっている為かその様子が顕著に現れてきているのだろう。
そんな中、僕達は森の中で昼食をとっていた。
「やっぱり似てても味付けが違ったりするなぁ」
というのも今日はノインとカリアが現地の料理を買っていたためそれを食べている。
先日の店ではそこまでウェンテライウ王国と同じような一般的なものしか無かったため初めて食べると言って良い。
◆
そんな訳で帝国ならではの料理を楽しんだ後、事件は起こる。
「ご歓談中失礼する。私は創魔様の忠実なる配下である。
これより、創魔様からの言葉を伝える」
突然現れた見た目は人間、雰囲気は魔獣のいびつにも思える人形の生物から一方的にそう言われる。
まず、創魔様というのが誰なのかすら分からない。
「ここで起きている事件を解決したいのなら魔族の大陸に来ると良い。
それでは失礼する」
用件が終わると恐らく魔族なのであろう生物は姿を消した。
一瞬の出来事に誰も一声も発することが出来なかった。
◆
「どう・・・・・・する?」
沈黙の中皆に意見を求める。
「さすがに私は行けない可能性があるな。ただでさえここに来るのでも許可が出るのに時間がかかったんだ。事の大きさを考えるに国に事情を説明せずに、というのも無理だろう。私は戦力に含めずに考えて欲しい」
「そうやな、罠の可能性もあるし、その創魔様ちゅうんがこの事件の首謀者とすると向こうには死神がついとる事になる。危険すぎるんやないか?」
リーセスは慎重的な意見だ。
「でも、行かないと犠牲者が出るんだぞ」
ノインは行くべきという意見のようである。
「そうやな。やから出来る限り人数を減らした方がええんとちゃうか?」
「確かに全員で行って全滅は避けたいな。それで言うと皆もバラバラの場所にいた方が良いかも」
リーセスの提案に僕が更に加える。
町や村の人を全員殺してしまう力がある可能性が高い以上同じ場所にいない方が良い。
今まではまだ旧帝国領でしか起こってなかった事と、何より死神が魔族と手を組んでいる事を知らなかったため今までのように王都で過ごしていたが、こうなった以上それも避けるべきだ。