258話
カイは彼らが急いでやって来ることを予測し宿の前で彼らを待っていた。
彼らがここに来た理由を考えれば急いでくることなど簡単に想像できた。
彼らの目的は恐らく僕たちと同じ。
違う点と言えばここに来た動機だろうか。
似たようなものであることに変わりはないが、違うと言えば違うだろう。
彼らの方が私怨が強い。
決して人を守りたいという気持ちがないわけではないものの、彼らの心の中には私怨、更にはとある人物を守りたいという思いが強いだろう。
◆
「こんばんは」
待っていると予想通り血相を変えてリゼイルさん達がやって来た。
血相を変えている理由は恐らく僕にリーセスがついてきているのを察したためだろう。
「リーセスは!?」
サイルさんまでもが普段の冷静さを失っている。
「ここではなんですし場所を変えましょう」
サイルさんの声は静かになってきている街では目立ち注目が集まっているため場所を変えることにした。
◆
やって来たのはギルド。
最近皆によく話を聞き回っていた3人組と今日現れたSランク冒険者。
注目を集めないわけではないが皆遠くから様子見をするだけで絡んでくることも、話しかけてくることもない。
だからこそこの場所を選んだのだが、昼前に来た時と同じ受付嬢が気をきかせて受付の裏の部屋をまた用意してくれた。
「それでリーセスは?」
まだ冷静さを取り戻していない3人をまずどうにか宥めることから取りかかった。
そして、少し経った後、
「一緒に来てますよ」
「何で連れてきた!」
リゼイルさんはまだ冷静になれてなかったようだが、冷静さを取り戻していたサイルさんがなんとかなだめてくれる。
「本人が望んだからですよ。元々は連れてこない方針でした。修学旅行ですし」
「あなたも知ってますよね。この状況はリーセスが連れ去られる時と同じなんですよ?もしまた操られたら・・・・・・」
サイルさんは冷静に、しかし最悪の事態が頭をよぎり言葉を止める。
「だからこそです。他にも操られている人が増えているかもしれないと思いませんか?
だとすると彼の力が必要になります。少し気にさわるかもしれませんけどレクスの言葉を借りるなら彼は大切な戦力で、本人がついてくることを望むなら拒むことはしない」
「もしや、レクス様も一緒に?」
「はい。だからこそ来れています」
「・・・・・・そうか。それなら明日、レクス様と一緒にここに来てくれるか?お願いしたいことがある」
「わかりました」
リゼイルさんからお願いは何となく察しがついたが言及はせず明日の朝会う約束をしたのだった。