253話
その後、あの村から離れた場所で野営をすることになった。
移動魔法でそれぞれの家に帰るというのも有りではあるが、これは一応修学旅行なのだ。
毎夜家に帰っていては修学旅行とは言えないだろう。
まあ、危険と判断すれば流石に帰るが、今回は大丈夫だろう。
あの村からこちらを追ってきた人はいなかったし、ここは森の中。
魔獣に襲われる事はあるかもしれないが、人目にはつかないだろう。
更にここに近づいてきたものに警告の為の相手に当たらないように魔法を放つ魔方陣とそれでも止まらない場合に発動される相手に向かって魔法を放ち続ける魔方陣を用意している。
それを全方位に用意したため対策は万全だ。
なお、皆にはその事を伝えているため極力外に出ない、出たとしても移動魔法で帰ってくるようにしてもらっている。
さらにはリーセスの幻惑魔法によりここに意識が向かないように細工してもらっているため余程のことがない限り大丈夫だろう。
◆
夕食はインベントリの中にある有り余っている料理を食べ、どう寝るかという問題となった。
「ここは、敷物敷いて川の字やろ。その方が修学旅行っぽいで」
リーセスがそう言うのは大部屋で皆で寝るというイメージがあるからだろう。
しかし、この年代の修学旅行は同性の2~4人で同じ部屋で寝る感じの気がする。
僕がそれを提案するとほとんど皆賛同してくれた。
ただ、マイが少しの反感と寂びそうな視線を向けてきていた。
「や、やっぱり皆で川の字で寝よう」
マイの視線に負け皆にそう提案するが、
「変なことはするなよ?」
僕がマイの視線に負けたことをレクスに悟られたらしく釘を刺された。
「そんなことしないって」
「他もだからな」
何かやけに釘を刺すな。
「・・・・・・もしかしてローゼさんがいなくて寂しいの?」
「川の字で寝るならすぐに準備するぞ」
別に準備に時間がかかるわけでもないのに・・・・・・・・・これは図星だったかな。
◆
「さ、そろそろ寝よっか」
そう言うとリーセスから待ったがかかった。
「忘れてるで、これを」
そう言いながらリーセスは枕を投げてくる。
「やったなー」
投げられてきた枕をリーセスに投げ返し、更に近くにあった自分が使う用の枕をリーセスに向かって投げ追撃する。
すぐにノインがそれに参加し、それから徐々にやる人が増え最後の一人となったレクスが、
「いい加減にしろ!」
と言うまで枕投げは続いたのだった。