第157話
レクスは結局部屋に移動させられてしまった。
この時間帯はローゼは待っていなかったらしく久しぶりに部屋に一人になった。
「思ったより寂しいな」
「嬉しいこと言うわね」
その言葉と共に後ろから抱きつかれ急のことに体制を崩しそうになる。
なんとか耐えると今度は先程の発言を聞かれたことに恥ずかしくなった。
声で後ろから抱きついてきたのがローゼだと言うことがわかったためである。
そもそもそんなことをするのはローゼだけなのだが。
「ローゼといると自分が王子なのを忘れそうだ」
「そう仕向けたのはレクスでしょ?」
これにはなにも言い返せない。もっともレクスもこの状況を喜んでいるため文句もなにもないのだが。
◆
カイはマイの寝ているベッドの横に座っていた。
カイは後悔をしていた。確かに今回の余分に力を使いすぎてしまったことがトリガーとなったがそれまでに大分負担をかけていたのは自分自身であり自分のことに精一杯でマイの限界が近いことに気づけなかった。
婚約者として失格だとまで考えている。
◆
マイは少し前から意識を取り戻していた。
何故目を開けないのか、それはカイがぶつぶつとなにかを呟いておりその内容が気になったからである。
聞いたのは後悔の念だった。早く目を覚まして安心させないとと思い目を開けようとするが同時にカイの手がおでこに触れ阻止された。
熱がないか心配してくれたのだろうと推測しもう一度目を開けようとするが今度は何か少し冷たい濡れた布のようなものがおでこに乗せられるタイミングだったためまたもや阻止されてしまう。
熱でもあったのだろうかと思い三度目の正直とばかりにもう一度目を開けようとする。
今度は上手くいきちゃんと目を開けることが出来たが、先程まで目を閉じていたせいか視界がぼんやりしている。辛うじてカイが自分の顔を覗き込んでいるということはわかり先程までもずっとこの状態だったのではないかと恥ずかしくなる。
もちろんカイはマイの目が開いたため覗き込んでいたのだが。
目を閉じていたマイにはそれがわからなかった。
「大丈夫?」
「・・・・・・うん」
返事に遅れたのは先程の恥ずかしさとカイの独り言を聞いてしまった後ろめたさがあったためだ。
とりあえず上半身を起こそうとするがカイに止められる。
「病人はベッド、でしょ?」
カイはそう言い笑った。
「そうだったね」
と笑いながら返すが先程の独り言を聞いてしまっているため逆にカイが無理をしているのではないかと考えるのであった。