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Psychedelic~サイケデリック  作者: 幻想箱庭
第5章 運命の歯車は埋め込まれ
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第50話:牢獄機関(2)

「おい、ジン! いつ誰がそんなこと思ったって?! 別に焦ってなんかねえし、助けもちっとも待ってねえよ!」

「そうか? それにしては今のお前、図星を突かれたような顔をしているぞ?」

「……っ」


 指摘され、反射的に顔を背けるアレン。その目には明らかに動揺の色があった。


「……助けを待ってた? はっ、そんなか弱い乙女みてえな行動、あたしがするわけねえだろ。おまえの助けなんかなくたって、脱獄くらい一人でやってやるさ!」


 動じたのも束の間。アレンは嘲るような笑みを見せると唐突に立ち上がり、能力を封印している手枷を鉄格子に向けて何度も叩きつける。


「くっそ、壊れろよ! 何で外れねえんだよ!」

「……何、ムキになっているんだか。おい、よせよ。音を聞きつけて誰かやって来るかもしれねえだろ。少しは冷静に――」

「うるせえ、黙ってろ! こいつさえ外れれば、こんな牢獄くらい――」

「いいから静かにしろ! そして俺の話を聞け!」


 先程までの穏やかな口調とは打って変わり、声を荒らげてジンは叫ぶ。

 普段では見ることのない怒気を含んだジンの顔。その突然の変化に、アレンは叩きつけていた行為を止め、大人しく話を聞いてみることにした。


「……何だよ」

「いいか、アレン。前々から思っていたことを言わせてもらう。お前は少しでも弱い自分になることを極端に嫌う。それが肉体的なものであっても、精神的なものであっても。だけどな、この世に完全に強い人間なんて存在すると思うか? しねえだろ?」


 鉄格子越しに説教を始めるジン。

 彼が語る内容に、思い当たる節があったのだろう。アレンは無言で聞き続ける。


「どんな奴にも、弱い部分は必ずある。それなのにお前は完全否定して、常に強さを求めている。別に、強くあること自体は悪くねえ。だけどよ、どんなに繕ったって、一人じゃ出来ねえこともあるだろ? さっき俺があんな風に言ったのはな、馬鹿にしたかったからじゃねえ。人に頼るということを覚えてほしいからあえて言ったんだよ。俺はな、お前が何でもかんでも一人で背負って無茶しねえか心配なんだよ」


 落ち着き払った様子で、しかし真剣な瞳でジンは諭す。


「今更、(つちか)ってきた性格を直せとまでは言わねえ。その代わり、一つだけしてほしいことがある。よく聞け。たまにでもいいから俺の助けを必要としろ。分かったか?」

「……ったく、しょうがねえな」


 軽くため息をつき、睨むような視線をジンに送る。


「分かったよ。だが、女とガキ扱いだけは絶対にするんじゃねえぞ。人に条件を出すんだから、おまえもあたしの条件を呑め」

「勿論、そこは承知したぜ。……さて、説教タイムは終わりだ。早くしねえと、尋問官が来ちまうからな。今、お前がやるべきことはもう分かっているよな?」

「ああ、気に食わねえけどな」


 すぅっと息を吸い込み、アレンは蒼い双眸を大きく見開いて、


「いつまでもここにいる趣味はあたしにはねえ。ジン、あたしを助け出せ!」

「誰かそこにいるのか?!」


 その時だった。部屋の外から男の声が聞こえてきた。


「やべえっ!」

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