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Psychedelic~サイケデリック  作者: 幻想箱庭
第3章 争いと憎しみの撃鉄は起こされて
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第35話:罪の告白、明かされる真相(2)

「ソニアさん、自分を責めなくても大丈夫ですよ。よく事件のことを話してくれましたね。ご安心ください、事件の真相は(わたくし)達が必ず突き止めます。(わたくし)達が全ての疑いを晴らしてみせます」


 胸に手を当て、微笑みながらはっきりとソニアに応えるレイ。だがその傍ら、レザヴェルだけは若干訝しげな表情を浮かべて、小声で彼に問い掛ける。


「……レイさん、よろしいのですか? あの二人組の件もありますし、まだこの方の証言が正しいかは分かりませんよ。一度、〈思念探知(サイコメトリー)〉の能力者に記憶を読んでもらった方がよろしいかと……」

「大丈夫ですよ、レザヴェルくん。ソニアさんは嘘をついてはいません。……ですが、目撃者であるソニアさんを犯人が狙っている可能性もあります。あの少女達のことはキースくんに任せるとして、レザヴェルくんはソニアさんを保護してくださる機関まで連れて行ってもらえますか?」

「……かしこまりました」

「少女達……?」


 彼らの会話の中に引っ掛かるものを見つけたのだろう。ソニアは自身が抱いた疑問を確かめるべく、恐る恐るレイ達に尋ねた。


「あの、先程もう一人の方とお話していました時に、『テロリスト相手に暴れまくった』人がいたって……。もしかしてその人、アレンさん……?」

「アレンさん?」


 ソニアの口から度々出てきた人物の名前を聞き、それが自分達が追い掛けている少女のことであるとレイ達が気づいた時、堰を切ったように彼女は叫んだ。


「どうしよう……っ、もしそうだったらアレンさん、時計塔に行ってテロリストと戦うつもりなんだわ! アレンさんが危ない!!」

「落ち着いてください、ソニアさん! 今、組織の者が時計塔に向かっています。そのアレンさんという方は(わたくし)達が必ず助け出しますので、ソニアさんは何も心配せずに、レザヴェルくんと共に先に街へ向かってください」


 レイが出した指示に「でも、」と一瞬だけソニアは戸惑ったが、対能力者組織の人間である彼の「必ず助け出す」という言葉に、彼女は希望を託すように静かに頷いた。


「それではレザヴェルくん、よろしくお願いします」

「はい。……ソニアさん、行きましょう」


 レザヴェルに背中を押されながら、一度だけ背後を振り返るソニア。そして丁寧に一礼すると、そのままレイの前から去っていった。

 二人の見送りを終え、改めてレイは無名区域(エリア)へと足を踏み出す。その時、彼のイヤリングが青い光を帯びて輝き出した。組織の誰かから連絡があったのだろう。


「……おやおや、今日はやけに同じ場所で呼び止められる日ですね。……はい。こちら、レイです」

『あー、こちら情報班、ノア・フェルナンガード。レイさん、只今大丈夫すか~?』


 イヤリングから聞こえてくる男の声。ノアと名乗った人物はどこか気怠そうな口調でレイに尋ねた。

 聞いただけでは不真面目そうな印象を与えかねない声の主であったが、レイは咎めるどころか、むしろ彼からの連絡を待っていたと言わんばかりの表情で応答する。


「ええ、大丈夫ですよ。ノアくんから直々に連絡があるということは、調査班から事件に関するいい手掛かりを入手出来たからですよね?」

『そうっすね~。さっきブランドからヤスガルンの()()()()()()で起きた「焼死体事件」の犯人の顔写真が送られてきたから、今からそれを転送しますね~』

「ありがとうございます……おや?」

『どうかしたんすか? レイさん』


 イヤリング越しで尋ねてくるノアの声に返答することなく、脳裏に『ある疑問』が浮かんだレイは顎に手を当てて考える。


(……確か、ソニアさんが犯人を目撃した場所は()()()()()()()()だったはずでしたが……?)


 ファルネルツ通りとレニーヌ通り。両者共にヤスガルンにある道の名称に違いはないが、地図上その二つは隣接するどころか全く離れた場所に存在しており、混同しようのない通りであった。

 ある種の違和感を覚えながらも、レイはイヤリングについている映写機能の部品に触れて、送られてきた画像を目の前の空間に映し出す。そして――。


「……!」


 画像に載っている人物の顔を見た瞬間、彼は驚愕し、固まった。


(……まさか。いえ、そんなはずは……っ!?)


 それまで笑みを崩すことがなかったレイの表情が、一転して動揺を露わにした。

 予想だにしなかった出来事に彼は再び考え込むと、自身の心を落ち着かせるためにも情報を整理し始める。


『レイさん?』

「……すみません、ノアくん。一つ確認すべきことが出来ましたので、いったん通信を切ります。また後ほど連絡をしますね」

『……? 了解~。んじゃ』


 通信が切れ、次第に光が消滅していく中、レイは画像の人物に視線を戻して言葉を漏らした。


「……これは、一体――」


 レイの視線の先に映っていたもの――それは紛れもなく自分達が追っていた、あの紅い髪の少女アレンの姿であった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆

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