第26話:アレンの尋問
遠くから聞こえてくる派手な戦闘音と地響きを感じつつ、先を進んでいたアレンは中身が入ったままの注射器をブーツの踵で踏み砕き、負傷している戦闘員の一人に詰め寄った。
「……ひっ、助け……」
怯え、アレンに命乞いをする戦闘員。
彼の周囲には、先程まで戦っていたはずの仲間達が血を流しながら床や壁にくずおれていた。
完全に戦意を喪失し、尻餅をついた状態で後退りする戦闘員の髪をアレンは強引に掴み、思いきり壁に叩きつけて顔を覗き込む。
「安心しな。あたしが何のためにおまえだけ気絶させないでいるのか分からねえのか? おまえには色々と訊きたいことがあるんだよ。……おまえ、あの薬はどこで手に入れた?」
凍てつくような鋭い眼差し。
問い詰められた戦闘員はがたがたと震えながら、ゆっくりと口を開いた。
「あ、あの薬は……、ケイレブさん……俺達の雇い主から手渡された物で……、ケイレブさんがどこで手に入れたのかは、俺達にも分からなくて……」
「ああ、分かった。それじゃあ、次だ。おまえら、あたしが働いてた店でも暴れてくれたよな? おまえらの目的は何だ? 能力者を集めて何を企んでる?」
「イ、イレイザートで暴れていたのは無能力者共で……、一応、その中に俺達の仲間の能力者もいたけど……。薬を持たせてそいつらを利用して、俺達能力者の存在を世界に思い知らせてやろうと……」
戦闘員の返答に、呆れ顔でため息をつくアレン。
「くだらねえ」と一言、小声で呟く。
「じゃあ、その雇い主のところに案内してもらう前に、最後の質問だ。……おまえ、白い帽子をかぶった、スーツ姿の男を知らねえか? 虹色の瞳を持った、細身の紳士だ」
決して尋問相手から目を離すことなく――質問の本題へと差し掛かったその時、アレンの様子が豹変した。
これまでの内容とは何の関連性もなさそうな問い掛け。しかし、訊ねている彼女の声はとても低く、殺意と憎悪に満ちた表情を戦闘員に見せていた。
そのただならぬ雰囲気に、本能的に命の危険を感じ取ったのだろう。戦闘員は体を硬直させ、否定する。
「お、俺はそんな奴は知らねえ! 本当だ! あ、でも、たまにケイレブさんが『取引をしに行く』って言って、誰かに会いに行っているみたいだけど……。あと、ケイレブさんのことを知っているとすれば、キースさんとアッシュくらいしか……」
「分かった、もういい。そのケイレブとかいうやつがいるところに案内しろ」
掴んでいた髪を一度離し、背後に回って腕を締め上げたアレンは、先に進むように小突いてから戦闘員が案内する方向へ歩いていった。
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