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十剣人の道標

 ミースとルーは、前回よりも短い時間で十剣人たちがいる耳の大地へと辿り着いていた。

 あれから何度か黒いモンスターと戦って満身創痍だが、それでも致命傷は負っていないのでミースの機転が功を奏したのだろう。


「人間、それに跳躍侯……」

「レッドエイトさん、まだ無事ですね」

「鉄腕伯、今はルーたちのことを話している暇はない。神殺しの団(ラグナレク)が壊滅するかどうかのターニングポイントだ。出来る限りの情報をくれ」

「情報か……? そうだな……あの黒いモンスターはエンシェント・デーモンというらしい。辛うじて赤龍のデータベースに残っていた。悪魔たちの祖先のようなものだとか。まぁ、今いるのはダンジョンがコピーしたような存在だとは思うが……」

「情報、ありがとうございます!」

「そ、そうか。役に立てたのなら何よりだ……」


 いきなりの言葉で困惑するレッドエイトの横を通り抜け、ミースとルーは部屋の奥へと入っていく。

 そこには倒れているが、まだ生きている十剣人たちがいた。


「なるほど……『壊滅するかどうかのターニングポイント』とは、そういうことなのじゃな……」

「ヒョヒョヒョ、そういうことかのぉ」


 その中の古株である賢王ナバラと老練伯アルヌールは、ルーの言葉の意味がわかったらしい。

 四月朔日ぽんた、ゾンネンブルクは疑問に思いつつも無駄口を挟まないようにしている感じだ。

 吃音王パイ・スターゲイジーは身体が弱いのか、すでにぐったりとしていて喋れる状況ではないらしい。


「えーっと……ルーは頭が悪いから、ミースに任せた。ほら、頭脳担当がんばれ!」

「では――……単刀直入に言いますと、少し前にハインリヒさんたちがワールドクエストに失敗、そのために神殺しの団メンバーへのデバフと、本拠地のダンジョン化が発生したと思われます。ここもエンシェント・デーモンが大量にやってくるので危険です。十剣人の方々、何か気付いたこと、解決方法などをご教授ください」


 有事なので一気にまくし立てたが、十剣人たちはそれである程度状況を理解したらしい。


「初めましてだな。好戦伯、ゾンネンブルクだ」

「いえ、前回お会いしていますね。ミース・ミースリーです」

「そうか……素で忘れてた、すまない。それで私からの意見としては――」

「意見としては?」

「エンシェント・デーモンは強い」


 そりゃ強いのはわかる、とルーが小声でツッコミを入れる。

 ゾンネンブルクはメイド服を整えながら言葉を続ける。


「それに普通のダンジョンのモンスターと違って、同じ種族なのに一体一体に個性があるように思える。同じ殴り方でも効くのと効かないのがいる感じだ」

「残念ブルクはいつも通りの脳筋だ~ね……」

「いえ、とても参考になりました」


 ミースとしては何か気付きを得たようで、ペコリとお礼をした。

 ゾンネンブルクも立ち上がりメイドっぽく一礼をして、デバフの効果が辛いのかまた座り込んでしまう。


「えーっと、あちきは本当に初めましてですね。若輩者ながら青歯王を名乗らせてもらっている四月朔日ぽんたです。実際に歯は青くないです。ぽんたでも、ぽんちゃんでも、ぽん太郎でもお好きにお呼びくだせぇ。ちなみにキツネでも犬でも猫でもなく、タヌキモチーフですから、そこんところは――」

「ぽんた、自己紹介が長い。お前のFスキルも知ってるから手短に頼む」

「あっ、はい」


 ぽんたはタヌキ耳をシュンとさせてから、再び話し出す。


「あちきが気付いたことはですね……これはとても重要なことだと思うのですが……ななななななんと!」

「なんと?」

「この世界とは別のところにいるあちき本体までデバフがかかっているんですよ! これはすっごくすごい情報ですよ!」

「……あ、そうですね」


 ミースは最初からそれに気付いていたのだが、さすがに先輩団員が自信満々に話してくれたので言わないでおいた。

 可哀想という気持ちが強い。


「次、お願いします」

「何か気持ち、反応薄くないっすか!?」


 察しの良いぽんたをスルーして、老練伯アルヌールが割り込んできた。


「ヒョヒョヒョ。もし、ワシが悪魔側だったのなら、この絶好のチャンスは逃すまい。ダンジョン化によって本拠地自体の隠蔽効果が薄れて目立っておるし、たぶん進入もフリーパス状態じゃからのぉ」

「なるほど……、たしかに悪魔側の視点を考えてはいませんでした……。さすがのご慧眼です」

「やっぱりあちきとリアクションが違いすぎる!?」


 外野はスルーして、最後は賢王ナバラの番となった。


「そうさなぁ……。妾もデバフの効果を受けていてろくな魔法を使えぬが、探知魔法でボスの方角と距離を正確に算出しておいた」

「そんな魔法が!?」


 魔術でもダンジョンの死体の位置をある程度調べることができるのだが、それをボス、しかも正確な位置を割り出すというのは不可能だ。

 神々の加護を受けし魔法でしか成し得ない奇跡である。


「ボスの場所は、この本拠地の心臓部――レッドハートが設置してある部屋じゃな」

「でも、ルーが思うにボスの位置を知っても無意味じゃ……」

「いえ、俺は冒険者学校でこう習いました。突発的なダンジョン化は、ボスを倒すことで元通りになるケースもあると」

「なるほど……つまり、ボスを倒せば解決ってわけだな!」

「ダンジョン化は解決する可能性はありますね。ただ、そのあとでデバフをどうするかが……」


 ダンジョン化をどうにかしても、神殺しの団全員にかかっているデバフをどうにかしなければ戦力は立て直せないだろう。

 デバフが時間などで切れてくれればいいのだが――


「そのデバフなのじゃが、どうやら時間によって強まってきておる。このまま身体を蝕んでいけば長くはもたんのぅ……」

「えっ!? デバフで死んじゃうとか、これってそこまでヤバいの!?」


 ルーは驚いているのだが、ミースは最悪の事態として想定はしていた。

 実質、デバフの被害しか受けないはずのぽんたが死んでいたのだから。


「とりあえず、次の目的としては早急にボス部屋を目指して討伐という感じですかね……。希望的観測ですが、ボスを倒せばデバフも一緒に解けるというのもありえますし……」

「……そ、そうだな、ミース。じゃあ、早速ボス部屋へ――」

「いえ、それはちょっとキツそうかもしれません」


 ミースの言葉の意味はすぐにわかった。

 エンシェント・デーモンたちが部屋に押し寄せてきたからだ。

 この先がどうなるかは、ルーの前回の記憶で知っていた。

 どうやら二周目はここまでらしい。

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