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ミースの考察

 ミースの移動速度はソロなら、ルーの短距離転移に追いつけるくらいだった。

 お互いに息も上がらないので、その間にミースは考えをまとめることにした。


「ルーさん、少しお話ししたいことが……」

「なんだよ! 話をしたって何にも――……いや、ルーはそういうのも期待してお前を連れて来たんだった……頭に血が上っていた、ごめん」

「いえ、俺が冷静でいられるのはルーさんの孤軍奮闘した記憶を見たからです」

「べ、別にたまたまルーしかいなかっただけだ……!」


 ルーも少しだけ落ち着いたらしいので、本題に入ることにした。


「まず、ことの始まりですが、広範囲、または神殺しの団(ラグナレク)所属のメンバーを狙ってのデバフだと思います」

「ふむ? それが何か重要なのか?」

「現時点では重要ではないかもしれませんが、後々で何かの鍵になるかもしれません。……それで、なぜ俺とルーさん、それとレッドエイトさんだけ平気だったのか、ということです」

「そういえば、そうだな……。ルーだけ外にいるからデバフを喰らってないだけかと最初は思ったけど、ザコミースと一緒にいた二人もデバフを喰らっていた」


 デバフを受けていないのはミース、ルー、レッドエイト。

 デバフを受けたのはそれ以外。


「距離があまり関係ない影の世界にいる、ぽんたにすら影響していたとなると……」


 さらに距離の離れた町などは確認していないが、今回は距離というのよりは所属メンバーだけを条件に狙う特殊なデバフと考えた方が良さそうだ。


「それと同時に、本拠地のダンジョン化が起きたんですよね?」

「そうだな……ルーが外に出てから悪寒を感じて、中に入ったらダンジョン化していた」

「それで、ダンジョン化で思いつくのは団長――ハインリヒさんたちが行っている最中だったというワールドクエストの失敗罰則です……」

「まさか……いや、そうか! 人界の一部がダンジョン化するという失敗罰則が、運悪く本拠地に当てられたってことか!」


 あのハインリヒが敗北したとは考えにくいが、そうであれば辻褄が合うことが多くなる。


「同時に、悪魔側のワールドクエストの成功報酬が発生したと考えるのが自然です。それがこのデバフ……」

「たしかにワールドクエストの効果なら、この理不尽すぎるデバフも納得できる……ザコミース、頭が回るな……」

「ただ、その場合はハインリヒさんたちが現時刻で負けたということになって、助けに来てくれるとは考えられないことですね」


 負けてからしばらく経ったなら移動時間も考慮できるのだが、負けた瞬間で本拠地に都合良く駆け付けてくれるということはないだろう。


「つまり、ルーとザコミースの二人で状況を何とかしなきゃいけないというわけか……」


 ある程度の情報を整理したところで、ミースたちは本拠地への転送場所に到着していた。

 急いで入ろうとするルーを、ミースは制止する。


「待ってください」

「何だよ、急がないとみんなが……!」

「方針を決めておきましょう」

「方針……?」


 前回のルーを見ると、十剣人がいる部屋まで一直線に最短距離を進み、闇雲に黒いモンスターと戦闘を繰り返していた。

 いくら戦力としてミースが増えたからといって、同じように行動しては辿り着くときには瀕死の状態だろう。


「この本拠地は移動に多数のルートが使えるはずです。【創世神の左翼】の強みを活かして、多少遠回りだとしても敵がいた場所を避けて進みましょう。急がば回れです」

「わ、わかったよ。たしかにそっちの方が早そうだし……万が一、敵がいても次のループにも使える敵配置情報を集められる……」

「それと――」

「まだ何かあんのかよぉ……」

「ルーさんが怪我をしないように俺が守ります」

「なっ、急に何を言い出すんだよザコミースのくせに!!」


 なぜか顔を赤くしたルーに、激怒させてしまったのかな? とミースは少し反省した。


「ええと、ルーさんの記憶を見るに、あの黒いモンスターは短距離転移が効きません」

「それはわかってるよ……真後ろでも反応されて、左手をガブーッと食べられちゃったし……」

「外見的には目が後ろに付いていることもないし、初戦闘なので俺のときのように読み勝ちしたとも思えません。仮説としては魔力・聴覚感知、または肌の触覚による風圧感知などかもしれません」

「それならどうすりゃいいんだよ……どうしようもねーだろ……」


 不安げな表情を見せるルーに対して、ミースはガラにもなく大げさなポーズを付けて鼓舞した。

 自らにビシッと親指を向けて――


「俺がいます! 相手が気を回せないくらいに戦って頑張りますから、ルーさんは決められそうなチャンスを窺ってください」

「は~……期待してないけど、任せたぞ。ザコミース……」


 ルーは溜め息を吐く。


(ザコミースはルーの記憶だけ見て分かった気になってるけど、黒いモンスターは今までのダンジョンの敵とは比べ物にならない強さだ。けど、経験が足りないから、そういう『自分は戦えます』リアクションをするのも当然か……。まぁ、ザコミースに緊張を解きほぐされて、不安が少しだけ和らいだというのもあるかな……)


 ルーは内心そう思っていたが、あまり時間を無駄にもできない。

 今は余計なこと――ミースでは黒いモンスターとまともに渡り合えないという議論はせずにおいた。


「では、十剣人たちがいる〝耳の大地〟という変な名前の部屋に向かいましょう。前回のレッドエイトさんの様子から見るに、ギリギリまでは守ってくれていたようです。十剣人の誰かなら、この困難な状況の突破方法も見つけてくれるかもしれません」

「ああ、そうだな! それじゃあ、ルーとザコミースの即席PTの出撃だ!」

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