ワールドスキル【創世神の左翼】
「ハッ!? ここは……。ワールドスキル【創世神の左翼】が発動した……? そうだ、ルーは……殺されて……」
ワールドスキル【創世神の左翼】――それは時間跳躍を行い、時を逆行することができる神殺しの団の切り札だ。
スキルは任意に使用するか、ルー本人の死亡によって発動する。
戻れる地点は一定で、スキルのくさびを差し込むことによって固定もできる。
「任意に使っていいのは団長が死亡したときか、神殺しの団の大半が死亡したときのみ……今がその状況だよね……」
ルーは慣れることの出来ない死の経験に震えながら、この時間にスキルのくさびを打ち込んだ。
これで再び【創世神の左翼】が発動しても、この地点に戻ることができる。
「スキルの使用回数は……四回……いや、アレがあるから実質的に三回かな……」
ワールドスキル各種は強力なのだが、その代償も大きなものが多い。
ミースの【創世神の右手】は急激にスタミナを奪い、油断すると死に至る。
そして、ルーの【創世神の左翼】は一生を通しての回数制限があり、その最後の一回は大きな代償を必要とする。
ルーはその代償を考えて恐ろしくなってしまう。
もちろん、そんなことはしたくないので残り使用回数は三回ということだ。
「これがどのタイミングかということだけど……うっ、この嫌な感じは……」
身体を通り抜けるような悪寒がした。
前回を思い出せば、ここで嫌な予感がして本拠地に入るとダンジョンになっていたはずだ。
「急がないとみんなが……!」
すぐに本拠地内へ転移陣で入ろうと思ったのだが、脳裏によぎるのはあの黒いモンスターだ。
相性が悪すぎて返り討ちに遭う未来しか見えない。
「せめてPT戦ができれば……でも、そんな奴が都合良く――………………いた! そうだ、いたよ、いたんだ! ザコミースたち! ここから離れてればデバフも受けてないだろう!」
成長の町ツヴォーデンからやってくると、パイが星見で占っていた。
あの三人は個々なら十剣人に劣るが、PTでの連携なら黒いモンスターを倒せるかもしれない。
それにミースは頭がキレるので、時間をループするルーの助けになってくれるだろう。
「吃音王、このダンジョン化は予知できなかったけど、ザコミースのことは占えてたから許してやるか! 成長の町ツヴォーデンの方向はあっちだから、ルーが迎えに行ってやるか……急がないと」
ルーは、すぐにミースたちがやってくるはずの方へ向かった。
――そして、ミースたちを探すのに手間取るのと同時に、合流したゼニガーとプラムも強力なデバフを受けていたのを知った。