ゼニガーの野望
それは旅路の途中、街道脇で休んでいるときだった。
ミースは暇を持て余し、手帳に何かを書き込んでいるゼニガーを覗き込んだ。
「ゼニガー、何してるんだ?」
「おわっ、急に話しかけられたら驚くでぇ!?」
ゼニガーはビクッと跳び上がり、手帳を落としてしまった。
ミースは謝りながらそれを拾う。
そこには『ミース』という文字が見えた。
「ごめん、ごめん……って、これ俺のことを書いてるの?」
「バレてもうたか~! せやで!」
「な、なんのために……?」
ゼニガーは、ふふんと自慢げに語り出した。
「商売人っちゅうーのはな、何も実物だけが武器やあらへん。おもろい土産話も立派な武器や! そこで、わいは旅の手記を書き留めているわけや!」
「なるほど~……。ちょっと見てもいい?」
「おう、男同士なら恥ずかしくもあらへん!」
「どれどれ……」
最初にミースに関することが書かれていた。
かなりの熱量で、友情について書かれている。
「……こ、これは俺が恥ずかしい」
「なはは! ミースはんは、ワイの一番の親友やからなぁ!」
「えーっと、次はレドナ……」
レドナに関しては、性格について文句を言いながらも、大事な仲間として認める内容が書かれている。
「割とマジメに書いている……」
「せやろ、せやろ!」
「……あれ、注釈というのがある。ナイスバディ?」
「おぉっと、それはワイが目測で集めた情報や! 今のご時世やと誤解されてまう――しかし、やましい気持ちはないでぇ! 装備選びは体型も重要やからなぁ!! これも商人としての活動の一環や!」
「そ、そうなんだ……。ええと、次は受付嬢のエアーデさん。超ナイスバディお姉さんって書いてあって、それについてかなりのページ数が裂かれているね……」
「大人の魅力に合う商品を考えるときの参考やで、うん!」
「な、なるほど……」
ミースは言いくるめられて、何か納得してしまった。
そして、次はプラムのページがあった。
「あ、二人して何楽しげにやってるのよ。私も混ぜなさいよ」
「げっ、プラムはん!?」
遊びに混ざるかのように楽しげなプラムは、ミースから手記を奪い取った。
「あっ、ゼニガーの手記が……!」
「へぇ、ゼニガーがこういう細かい作業をしてるなんて意外ね~。どれどれ……」
「……ミースはん。ちょいとワイ、ジョギングをしとうなったから先に行っとるでぇ……」
一目散に走り出すゼニガー。
ミースは首を傾げたが、何やら手記を見たプラムが震えているのが見えた。
「どうしたの、プラム?」
プラムは恐ろしい笑顔で手記のページを見せてきた。
そこには『お子様体型』と一行で簡素に書かれていた。
「私も何か運動をしたくなったわね……。上級魔術を向こうにぶっ放してみましょうかしら……」
「あ、あのプラム……? 目が笑ってないんだけど……」
「丁度、ゼニガーが逃げていった方にねぇぇぇぇーッ!!」
「さよならゼニガー……自業自得だから助けられないよ……」
――その後、黒焦げになったゼニガーが発見されたのであった。
本日は少し残念なお知らせと、良いお知らせがあります。
まずは少し残念な方から。
親ガチャ大逆転の書籍発売が9月30日に伸びてしまいました。
お待ち頂く事になってしまい、誠に申し訳ございません。私も最近知りました。
これに伴い、すでに完成している第三章のなろうへの投稿も発売日頃になります。
さて、気を取り直して良いお知らせを!
なんと、コミカライズ企画が進行中です!
こちらの詳細は、しばしお待ちを……!
漫画として動くミースやゼニガー、レドナやプラム……やったぜ!
というわけで今日は二つのお知らせもありましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました!!
ではでは!