まだ痺れるようなことにはならない二人
「なんやったんかな……爽やかな雰囲気で終わってもうたが……」
「悪魔にも色々なのがいるってことなのかな……そもそも、俺たちは悪魔のことをあまり知らないけど。――って、そんなことよりプラム! 大丈夫!?」
事が終わり気が抜けて、ようやく思い出されたプラムは機嫌が悪そうだった。
「ふーんだ。私よりもリュザックのことを気にしちゃって。どーせ私なんてその程度の女ですよ~だ」
「うっわ、こりゃ面倒臭いやつや……。全ての責任はミースはんにある。任せたでぇ!」
「に、逃げるなゼニガー……卑怯だぞゼニガァァァアアア!!!」
普段よりも俊敏な動きを見せて逃走するゼニガーを掴もうとするが、速攻で逃げられてしまい、プラムと二人きりにされてしまった。
非常に気まずい。
プラムからは何も言ってこない。
ミースから誠意を見せろという要求なのだろう。
「えーっと……その……プラム……」
「なによ」
「俺は、その、えっと……プラムが自分のことを構わずリュザックを倒せと言うから、プラムのことは心配だったけど耐雷のリボンがあるのを気が付いてて……うん……リュザックを倒そうと……」
ミースは複雑そうな表情をしながら、しどろもどろで話すしかない。
なぜならもう、すでに謝る側の人間で敗北は決定しているからだ。
リュザック相手のような起死回生の一手も無い。
謝り倒すしかない。
「ごめんなさい!」
戦闘の被害でひび割れている地面に、額をこすりつけながら土下座。
バッと顔を上げてから、プラムの手を取って傷を確認する。
「怪我は大丈夫なの!? どこか致命傷になっているところとかは……ないよね??」
「ちょ、ちょっと近いわよ!? どれくらいで死んじゃうかっていうのは、死ぬほど学んだから平気……すでに回復魔術もかけ終わってるし……」
「そう、よかった!」
「……ねぇ。私のこと、心配してくれてる?」
これまでのプラムとは打って変わって、二人きり今はしおらしく聞いてきた。
ミースは純粋な気持ちで頷く。
「うん、もちろんだよ」
「……どれくらい心配してくれてる? 世界で何番目くらい?」
急に質問の規模が大きくなった。
ミースは考えた。
現在、ミースが親しいと思える人間は、肉親を含めてもかなり少ない。
一番身近なのはゼニガー、レドナ、プラムくらいだろう。
その大切な三人に順位を付けることができないので、同率で一位という感じだ。
――という思考で、とても誤解されやすい回答をしてしまった。
「もちろん世界で一番だよ」
「ふっ、ふ~~~~~~~~ん……そう……なんだぁ~……ふぅぅぅぅん……」
(これは『ふ~ん』とか言ってるし、プラムはあまり興味なさそうにしているな……。やっぱり最初から順位なんて気にしてないし、すごく怒っているのだろうか……そうに違いない……)
ツンデレのツン部分だというのに気付かないミースは顔を青ざめさせるしかない。
「ミースの気持ちはよーっっっっっっっっく……わかったわ!!」
「ひっ、いきなり雷は止めてよ!?」
「なんで、そこで雷が出てくるのよ? まぁ、ミースがどれだけ私を求めてくれても、私がまだ自分で納得するまでは、想いに応えてあげるわけにはいかないわ。……だから、もう少しだけ待っててね」
「う、うん? あっ、わかった、待ってるよ……」
いつかミースが求めている自罰としての、重爆サンダー・トルネードを食らわせてやるから待ってろというのだろうと解釈した。
男らしく殺される覚悟で待つ。
そんな勘違いすれ違いの二人の元に、ルインやオーロフと合流したゼニガーが戻ってきた。
プラムはゼニガーの肩をポンと叩く。
「気を利かせて二人きりにしてくれるなんてやるじゃない」
「そ、そらどうも……」
(ミースはんとプラムはんの二人、何か進展があったようやな……)
プラムはルインと話すために去って行き、代わりにミースがやってきて肩をポンと叩く。
「……ゼニガー、死ぬ時は一緒だぞ……。重爆サンダー・トルネード……」
「ちょちょちょい!? なんでワイまで殺され……って、どうなってるんやこれは!?」
ワケもわからず混乱するゼニガーであった。