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リザルトと既視感

「さて……ドロップはあるかな」


 情報によると、ゲームチェンジャーのドロップは〝知は力也〟という本型の武器だ。

 これは知識があればあるほど攻撃力が上がるという特殊なものである。

 老練な学者レベルでやっと実践に使える程度なので人気はないが、ミースは面白そうだとは思っている。

 そんな期待の視線を受けていたゲームチェンジャーの魔素すら消え、その場に何かが浮き出るように出現した。

 その特殊な出現方法は一度だけ経験したことがある。


「……まさか、聖杯」

「なんやて!?」


 黄金の杯、本来はドロップしないはずのアイテム。

 ミースは慌てながら正体不明の聖杯を受け止め、鑑定をしてみる。


【デルタの聖杯:他にも様々な神を生み、その神たちもまた魔素から人間を創った】


「デルタの聖杯……? 始まりの町の聖杯とはまた別なのか」

「も、もしかして……それもワールドスキルっちゅうのが使えるようになる魔石が入ってるんかいな……?」


 ゼニガーの疑問は丁度、今考えていたところだ。

 ミースは聖杯から魔石を取り出せないか試してみたのだが――


「……何も反応はないな。あとでハインリヒさんに報告しよう」

「せやな。今回のワールドクエストの報酬でもないし、何も聞かされていないってことは想定外かもしれんからなぁ」

「えっ、今ワールドクエストって言ったの!? 私が知らないところでワールドクエストをやっていたの!?」


 そういえば、まだプラムには説明していなかったので、手短に内容を伝えておいた。


「わ、私……最悪のタイミングで試練のダンジョンに入っちゃったわけね……。いえ、これはオーロフが悪いということにしておきましょう」

「オレが悪いのかよ!? というか、何か蚊帳の外で全然意味がわからないぜ……」


 一般的な知識しか無いオーロフは、突然出現した聖杯も、巻き込まれたワールドクエストのことも理解できていなかった。

 説明すると神殺しの団(ラグナレク)のことも話さなければならないので、そこらへんは後日ルインに丸投げすることにした。


「あ、追加のドロップが出てきた。これはワールドクエストの報酬だね」


 続いてドロップしたのは金色の魔石が十個だ。

 中のスキルは空で、レドナ復活のために使っていたものと似ている。

 そこでまたオーロフ絡みのことが頭に浮かんできた。


「オーロフ、ドロップ分配はどうしようか。申し訳ないけど、どれも俺たち……というか俺たちを送り出してくれた人たちに必要なものなんだけど……」

「いらねーよ」

「可能なら買い取るような形で金貨を渡すとか――えっ? 今、いらないって……」

「そうだよ、いらねーよ」


 ミース、ゼニガー、プラムは今日一番驚いたかもしれない。

 あの欲と性悪の塊のようなオーロフが、いかにもお宝という聖杯と魔石をいらないというのだ。

 天地がひっくり返ってもあり得ない。


「オーロフ、お腹痛い? ポーション飲む?」

「頭を打った可能性もあるでぇ……」

「モンスターが化けている可能性があるから、やっぱり一回焼いておくわね?」


 散々な言われようにオーロフは大声で反論する。


「腹も痛くねーし、頭もおかしくなってねーし、あとダンジョンだからって気軽に殺そうとするな!!」

「でも、どうして……?」

「ダンジョンに潜ってて思い出しちまったんだよ。本当にやりたかったのは小銭稼ぎじゃなくて、オレが武功を立てて……ふんぞり返ってる奴らを見返したかったってな。だから、きっちりとオレも活躍したと吹聴しとけ! それが条件だ!」


 そう照れくさそうに言うオーロフに、ミースは笑わず真剣に頷いた。


「わかったよ! ちゃんとオーロフがボスの攻撃をパリィして、俺たちを助けてくれたことはみんなに伝えておくよ! 約束だ!」

「はんっ、そうしてくれや。これで無事戻ればオレも英雄サマ(・・・・)ってわけだ」

「英雄……始まりの町でのスタンピード解決はそう呼ばれるようになったね。……英雄……か……」


 そこでふと、ミースは引っかかることがあった。

 違和感――というより、既視感に近いだろうか。


「……」


 ありえないと思いつつも思考を巡らせているために、無言で聖杯と金色の魔石を大収納に入れる。

 それを見たゼニガーも、もう町に戻るのだからと武器を手渡そうとしてきた。

 ミースは受け取った青銅の槍+99だけを収納して、代わりに青銅の盾+99を渡す。


「ん? ワスプスピア+99も町だと邪魔やし、青銅の盾+99を渡してきて……どないしたん?」

「ん~……念のためだよ」


 町に戻るだけなのに槍と盾を装備したゼニガーは、ミースから何かを感じ取った。

 そして、同じ事に気付いたのだ。


「ダンジョン、スタンピード、ボス討伐、聖杯……」

「どうしたのよ? 二人とも?」


 疑問に思ったプラムが訊いてきたのだが、杞憂で無駄な心配をさせたくないのでミースは誤魔化す事にした。


「な、なんでもないよ。……あっ、ところで! プラムはなんで試練のダンジョンに来ていたの!?」

「な――なんでって……それは……その……」


 油断しているところに唐突すぎる質問だ。

 カウンターを食らったプラムは、後ろめたさからあたふたとしてしまう。


「えーっと……」

「ふっ、オレと駆け落ちだぜ」

「それだけは無いわよ」

「否定はえぇな……」


 オーロフに冗談を言われて、少しだけ心を落ち着かせたプラム。

 直視することができなかったミースの目をジッと見詰める。


「試練のダンジョンをクリアして……自信を無くしていたミースを引っ張ってあげたかったのよ」

「そ、そうだったんだ……心配させてごめん……」

「ばか、私の方が勝手をやっちゃったんだから、もっと怒りなさいよ」

「俺のためにやったんだろ? それなら……それだけプラムに想われているってことで嬉しいよ」


 そう真顔で言われ、プラムは照れくささで顔を真っ赤にしてしまった。


「なっ、なななななな何よ……ミースだって、いつも私を助けに来てくれて……いっぱい想ってくれてるじゃないのよ……」

「あ、あはははは……確かに」


 プラムの気持ちが伝播したのか、ミースも照れくさくなって頬を朱に染めていた。

 それを見ていた二人の感想。


「……オレは何を見せられているんだ?」

「お熱いことやでぇ。は~……ワイも彼女ほし~……」


 そんなやり取りをしつつ、ボス撃破で出現した脱出用の転移陣から成長の町ツヴォーデンへと戻るのであった。

 そこに待ち構えていたのは――


「待ちわびたぞ、七大悪魔王に手傷を負わせた者」


 リュザック――翼と角を生やして正体を現した悪魔公爵だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワイも彼女ほし~……」 …あれ?ゼニガー。マルトは?
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