表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/126

試練のダンジョンボスVS冒険者学校最強PT

「ミース!! どうしてここにいるのよ!?」

「それはあとで。プラム――それとオーロフ。今は急いでゲームチェンジャーを倒そう」

「はっ、クソミース! テメェに言われる筋合いはねぇよ! オレだけでも倒せてたが、イジメになっちまうから手加減していただけだ!」


 三人は一見バラバラな言葉なのだが、瞬時にそれそれの立ち回りを理解して、ゲームチェンジャーが襲いかかっているまでに体制を整えていた。


「オーロフ、頼んだ!」

「いくぜぇ! SR【パリィ】発動!」


 巨大なゲームチェンジャーの全体重を乗せた攻撃――普通ならば人間程度は吹き飛ばしてしまう威力だ。

 それをオーロフは真っ正面から防がず、華麗に受け流した。

 大きく隙が出来たゲームチェンジャー。


「次はテメェの役割だ! クソミース、気に入らねぇがやっちまえ!」

「有り難くいかせてもらう――〝日ノ軌(ひのき)二十連〟!!」


 ミースは軽やかなステップでゲームチェンジャーの眼前に舞う。

 全力疾走でここまでやってきたはずなのに息一つ乱していない。

 その両手に二刀流で握られた弱点の打撃武器――ひのきの棒+99があまりの早さに見えなくなり、それが二十連撃となってゲームチェンジャーを襲う。

 連打が重なりすぎて圧縮された一回の打撃音に聞こえるくらいだ。


『グギィィィイイ!?』


 ゲームチェンジャーの悲鳴か、それとも軋みを上げる音か。

 大きなダメージでよろめき、再び弱点属性をチェンジさせた。


「次に磔になったのはジャイアントワスプ……突き弱点だわ!! どうしよう、今のPTに弓や槍を使えるメンバーなんて……」

「大丈夫、そこはほら。ヒーローは遅れて格好良く登場するから」


 笑顔のミースを見て、プラムは察した。

 彼がそこまで信頼する突き武器持ちといえば一人しかいない。

 入り口の方から重装特有の、少し重めの足音が響いてくる。


「ふふん、よく来たわね――ゼニガー! 最後にやってきて良いところを持っていくつもりね!」


 そこにはゼニガーの勇姿が――ではなく、息を切らして死にそうな姿があった。


「ゼェハァ……コヒューコヒュー……死ぬ……相変わらずミースはんに合わせた全力疾走は死んでまうでぇ……」

「……生まれたての子鹿みたいね」

「とんだヒーローのご登場だな……大丈夫なのか、アイツ?」


 オーロフの問いに、さすがにミースも自信なさげだった。


「た、たぶん少し休ませれば大丈夫だよ、オーロフ。その間ちょっと盾を頼んだ」

「チッ、しゃーねぇなぁ!」


 意外にも土壇場の盾として優秀さを見せるオーロフは、ソロの状態でゲームチェンジャーの攻撃を防ぎ続ける。

 その間、ミース、プラム、ゼニガーが合流した。


「全ステータスにバフをかけるから近寄って。たぶんスタミナも多少は楽になるはず」

「お、おおきにぃ……」

「そうだ、プラム。ちょっと杖を貸して。これをこうして……」


 一分ほど準備をかねた休憩を入れて、ゲームチェンジャーと冒険者学校最強PTの戦いの幕が上がった。


「それじゃあ、攻め始めるから急激なダメージによるボスの攻撃パターンの変更に注意して!」

「い、いつまで後ろでやってんだ! クソミース、早く来い……!」

「お待たせ!」


 前衛にミースとオーロフとゼニガー、後衛にプラムが位置していた。


「っく、【パリィ】発動!」


 オーロフがタイミングを合わせて受け流し、ゲームチェンジャーの隙を誘発させる。

 そこへミースとゼニガーが飛び込む。

 現在の弱点は突き属性だ。


「クソミースとクソゼニガー、いけぇ!」

「ありがとう、オーロフ!」

「ワイまでクソ呼ばわりかいな!」


 いつものようにツッコミを入れつつゼニガーは盾装備ではなく、槍の二刀流をしていた。

 片方は今までの青銅の槍+99による一撃――弱点であるためにそれなりのダメージを与える。

 一歩下がるゲームチェンジャー。


「ワイの新装備、食らえやぁ!!」


 そしてもう片方は道中で合成、完成した槍だ。


【ワスプスピア+99 攻撃力25+99 急所突き 風属性:巨大蜂の針のような槍。+99まで強化したことによって敵の急所を突き、稀に二倍撃になる】


『グオォォッ!?』


 突きが当たった瞬間、白い火花のようなモノが散った。

 ゼニガーはニヤッと笑う。


「スキル【急所突き】が発動して二倍のダメージや! ――ほな、あとは任せたで!」


 ゲームチェンジャーは突き攻撃を二連続で食らってもまだ踏ん張っていたが、ゼニガーの後ろからヒョイッと飛び出て来たミースに視線が向けられる。

 その手にはひのきの棒+99や銀の剣+99でもなく、青銅の槍+99が握られていた。


「予備で作っておいてよかった。あまり扱いには慣れてないけど――!」

「なっ!? クソミース、テメェ槍にも適性があるのかよ!?」


 今まで実践であまり試した事はないのだが、ミースは全装備に対して適性がある。

 もちろん、使い慣れた系統が一番なのだが、こうして相手に合わせて使い分けることもできるのだ。


「見よう見まねの槍だ!」


 ゼニガーと同じような構えで鋭い一突きを放つ。

 動きはゼニガーより洗練されていないが、フィジカル部分の攻撃力が高い分、強力な一撃になる。

 命中、真芯を捉えた。


『ガガガガァァァッ!?』


 二人合わせて三連撃。

 ゲームチェンジャーは勢いよく倒れ、地面で削れるような音を出す。

 そのまま地面に横たわると思ったが、ダメージの勢いを利用して大きく後ろに退いた。

 そして、ミースたち前衛と遮るように雑魚モンスターの群れが地面から出現する。

 これは体力を大きく削った場合の行動パターンの変更だろう。

 磔もエアー・クレイドロンにチェンジしていて、弱点は火になっていた。


「これは雑魚モンスターで時間稼ぎするパターンかな」

「せやな、無理にボスのところまで辿り着いてもワイらじゃお手上げや」


 妙に落ち着いているミースとゼニガーに対して、オーロフは苛立ちを隠せない。


「おい、どうすんだよコレ!? オレらは地道に一匹ずつ倒して行くしかないのかよ!」

「うーん、俺たちにできることは~……」

「ちょっとそこ通りますよ、というアレのために横へ退くことくらいやな」


 もう勝つと分かってしまっている二人に手を引かれ、オーロフは射線(・・)から移動させられた。

 ハッとして、プラムの方へと意識を向ける。


「あら、残念。人間へのダメージもちょっとは見ておきたかったんだけれど」


 顔には貼り付けたような女王の笑み、手には成長の町ツヴォーデン最強の杖が握られていた。


【エレメントワンド+99 攻撃力30+99 魔術チャージ:エレメント・クレイドロンを凝縮させて作られた金色の杖。+99まで強化したことによって超強力な一撃を放つことができる】


「さっきから溜めてた力を解放するわよ」


 武器スキル【魔術チャージ】は通常よりも時間をかけて魔力を込めることによって、発動魔術の効果を跳ね上げるというものだ。

 それによって目に見えるほどの赤い魔力がプラムの周囲に渦巻き、前方に向けられたエレメントワンド+99へ指向性を持って〝破滅〟が形づくられていく。


「ヘパ、その熱き力の弩を私に寄越しなさい――重撃(チャージ)ファイア・バリスタッ!」


 ボス部屋に赤が迸った。

 通常の上級呪文であるファイア・バリスタの場合は、城壁に穴を開けられる程度の威力だ。

 一方、これは指向性を持った〝破滅〟である。

 直径十五センチ程度の赤い弩矢に見えるのだが、それが通り過ぎただけで触れていない雑魚モンスターが燃え上がり、直線上にいるものに至っては瞬時に炭化している。


『グボォォォオオオオ!?』


 それは燃えている音なのか、断末魔なのかわからない。

 直撃を食らったゲームチェンジャーは、たった一撃で胴体を消滅させられ、四肢を燃え上がらせながら魔素に還っていた。


「これが精霊の女王、プラムミント・アインツェルネの本当の力よ!」


 プラムは自信満々の表情でエレメントワンド+99をクルクルと回してながら決めゼリフを言っているが――強力すぎる魔術が壁に激突して、ダンジョン全体を揺らすような爆音が響いてかき消されている。

 それを見ていたオーロフは青ざめながら突っ込んだ。


「このとんでもない威力にオレを巻き込もうとしてなかったか……」

「プラムはそういうところあるから」

「ドンマイやで、オーロフはん」


 放心状態のオーロフは、左右からの肩ポンを黙って受け入れるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の評価欄☆☆☆☆☆をポチッと押して
★★★★★にしてくれると応援になります!

いつも読みに来て頂き、ありがとうございます!

「ブックマークに追加」も便利なのでオススメです!



こちら、書籍版です!

『親ガチャ失敗したけどスキルガチャでフェス限定【装備成長】を引き当て大逆転 2』
著:タック
イラスト:桑島黎音先生

レーベル:ムゲンライトノベルス
ISBN:978-4434357480
発売日:2025年6月2日
価格:1650円

結城にこ先生によるコミカライズ一巻も発売中です!
【↓各種情報はこちらのリンクから↓】
ehl67y8ien731tpx2nqihmp1yqc_pw5_160_1nq_1vca4.jpg ehl67y8ien731tpx2nqihmp1yqc_pw5_160_1nq_1vca4.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 「いくぜぇ! SSR【パリィ】発動!」 …SRじゃなかったでしたっけ? まあ、オーロフだから見栄で言ったのかもですが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ