人の金で飲む国宝級のポーションは美味い
ミースとゼニガーは、向かってくるモンスターを倒しながら一層目を進んでいた。
「エレメント・クレイドロンがいるけど、銃があるから楽勝だね!」
「み、ミースはん……いくら何でも気軽に撃ちすぎやないか……」
「プラムと合流するまでくらいしか使い道がないし、弾を使い切っちゃってもいいんじゃないかな!」
ミースの言っていることは正論なのだが、ゼニガーとしては一発のお値段を考えると商人として胃が痛くなってしまう。
右手で銀の剣+99、左手に銃を構えて、近距離攻撃をしながら相手に撃ち込むというスタイルだ。
これは遠い未来、近付くことによって銃の効果を最大限に発揮するガン=カタナと呼ばれる流派になるのだが、それはまた別のお話だ。
「あ、ゼニガー。怪我をしているよ?」
「そ、そうやな……でも、動けなくなるほどでもないし――」
「もらった国宝級のポーション、飲もう?」
「考えてはいたけど勿体ないやろぉぉぉおお!?」
「プラムと合流したら必要なくなるし、使いどころは今だよ。ほら、早く」
ゼニガーも頭ではわかっていた。
この渡されたアイテムは、プラムと合流するまでのための物なのだ。
使うのならこのタイミングしかない。
「ああ、もう! 飲んだるでぇ!!」
このとき、ゼニガーは自分の中の節約という常識を打ち砕いたことにより、脳内の快楽物質が最高潮に達していた。
「人の金で飲む国宝級のポーションは美味いでぇー!!」
涙目でヤケになっているゼニガーは楽しそうでもあった。
そんなことをしながらダンジョンを進んでいくと、モンスターが同士討ちをするという異常行動を起こし始めた。
そろそろスタンピードが近いのかもしれない。
「これは不味い感じかな……」
「せやけど、ここからはもう相手から襲ってくることはなくなるんや。進む速度が上がるのは不幸中の幸いやな」
同士討ちの最中、モンスターは冒険者を敵視しないようだ。
本来ならそのまま無視するのがいいのだが――
「んー、エレメント・クレイドロンと、ジャイアントワスプだけはある程度倒しておこう」
「ほ~、その二種類ということは……了解や!」
意図に気が付いたゼニガーは、何かを期待するような笑みを浮かべていた。
「たぶん少しあとにモンスターは外部に向かい出す。プラムたちもそれに気が付いて、スタンピード解決のためにボスへ向かうはずだ」
「せやな。ワイらもボスへ向かっていれば合流できるっちゅうことや」
「あとはそれまでに外のルイン先生と、謎の助っ人というのが耐えてくれるかだけど……」
スタンピードは内部に潜る側以上に、町の防衛もしなければならない外での対処の方が難易度が高い。
果たしてそれができる冒険者などいるのだろうか。
不安はあるのだが、今は信じるしかない。