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ゼウスクラスVSアレスクラス

本日、三話連続更新! その二。

「ん~、よく寝たぁ~」


 二日目の朝。

 プラムはテントの中から出てきて、元気に背伸びをしていた。

 どうやらお嬢様でも満足できる寝袋だったらしい。

 ミースはそれが懸念点だったのでホッとした。


「それじゃあ、出発の準備をしたら三層目を攻略しようか!」


 ミースはいつも以上に気合いを入れていた。

 それもそのはず、三層目は他の入り口との合流地点となっているのだ。

 場合によっては他クラスのPTと遭遇するかもしれない。


「ミースはん、もし他のクラスと一緒になったらどうするん?」

「そうね。私もそれを聞いておきたいわ」


 ゼニガーとプラムの二人は、生活魔術で出した水を使って顔を洗っていた。

 すでに準備を終えていたミースは、少し悩みながら答える。


「相手の出方次第かな……」


 今回の対決は、ボス討伐までのクリアタイムで勝負が決まる。

 二者が出会ってしまっても、お互いがお互いを放置するのが最速コースだ。

 これは残りの1クラスが先にいる可能性もあるため、互いに争っても無意味というのもある。


 しかし、残りの1クラスが後ろにいると想定するか、最初から諦めて2位争いをするのなら別だ。

 遭遇した1クラスを倒してしまった方が良い。


「基本的に、遭遇したクラスが攻撃してこなければ放置でいいと思う。一位を目指したいから」

「そうやな。でも、相手が攻撃してきたらしんどいなぁ……。いくらダンジョンで蘇生ができるからって、ガチでやりあったら命のやり取りになるやん……。さすがに躊躇してまうでぇ……」

「だよねぇ……」


 ミースとゼニガーは、これまで訓練ではない本気の対人戦というものをやったことがない。

 今まではモンスターや悪魔相手だったのだ。

 相手が蘇生されるとはいえ、殺すという行為は気が重い。


「え? そう? 意思のある相手を()るなんて、慣れてしまえばモンスター戦と同じよ?」


 プラムは首を傾げながら言い放った。

 その様子に頼もしさを感じると同時に、精霊のダンジョンでどんな修羅場をくぐり抜けてきたのかと恐ろしくなってしまう男二人だった。




 そして――三層目の聖域を出発して少し歩いたところで、声が聞こえてきた。

 どうやら向こうは、まだミースたちに気付いていないようだ。


「ね、ねぇ……オーロフ……さすがに夜通し歩くのは疲れたわ……」

「ちっ、うるせぇ……マルト……。オレも疲れてんだ……文句を言うな……」

「あ~……魔力が足りない~……あ~……」


 それを聞いたミースたち三人は首を傾げた。

 声からしてオーロフ、マルト、セレスティーヌのアレスクラスのPTだろう。

 疑問に思ったのはその内容だ。


(夜通し歩いた……?)


 今回のルールでは、夜はダンジョン内を移動できないはずだ。

 さすがにおかしいと気付く。


「けどなぁ……出発時間をオレたちだけ早めて、しかも休まず進み続けてんだ……。一位は確実だぜぇ……」

「そ、そうよね……。あのヘルメスクラスのリュザックだって追いつけるはずがないわ……」

「あ~う~……魔力が足りない~……」


 三人は満身創痍の状態だ。

 特に魔術師であるセレスティーヌは魔力切れを起こしかけているのか、ゾンビのような歩き姿だ。

 今の会話を見たゼニガーが『どうするんや?』と小声で聞いてきたので、ミースは即行動に出ることにした。


「オーロフ、聞きたいことがある。イカサマをしていたのか?」

「なっ!? テメェはミース!? なんでここにいんだ!!」


 こちらに気付いたオーロフが驚きの声をあげるが、ゼニガーも同じような気持ちだった。


「ちょっ、ミースはん!? いきなり飛び出して単刀直入すぎんか!?」

「ゼニガー。オーロフが俺に対してだけイカサマをするのなら構わない。けど、他を巻き込んだやり方は許せないよ。だから確認しておかなきゃ」

「……まったく、そういうところは嫌いやないけどなぁ……」

「しょうがないから、私たちもPTメンバーとして付き合うしかないわね」


 やれやれという風に、身を隠していたゼニガーとプラムも出てきた。

 互いに認識し合ったゼウスクラスPTと、アレスクラスPT。

 心なしか目線が火花を散らしているようだ。


「イカサマぁ? なんのことかわからねぇなぁ……」

「さっきの話は聞いていた。シラを切るつもりか?」

「あぁん? 証拠はあんのかよ、証拠はよぉ!?」


 オーロフはあくまでも潔白だと言い張るらしい。

 丁度そのタイミングで、背後から付いてきていた使い魔が明滅して音声を発した。

 それは地上にいるルインからだった。


『あ~、すべて聞かせてもらったぞ。というか既に感付いていて、アレスクラスの担任は拘束済みだ』

「なっ!? いつから気付いて!?」

『先生を無礼(なめ)るなよ、オーロフ。模擬戦でイカサマを出来ていた段階で既におかしかった。そこで学園長命令で馬脚を現すまで泳がせておけって言われてな。貴族から金をもらっていた馬鹿教師とその周辺を一網打尽ってわけだぞ』

「そ、そんな……」


 オーロフとマルトは肩を落として意気消沈という感じだが、セレスティーヌの方は何故かホッとしているようだ。

 彼女だけは脅されて無理やり連れてこられたのかもしれない。


『けど、安心しな。お前らも悪いが、それを許してしまった大人にも責任がある。だから、今回だけは全力でやってみろ。その結果が面白いのなら退学は許してやる』

「ほ、本当か!? つまり、目の前にいるゼウスクラスPTをぶっ殺せば……!」

『血の気が多い奴だな……。色々と考慮してやるから自由にやってみろ。それじゃあ、使い魔を通常の状態に戻すぞ。あとは勝手にやれ』


 ブツンと音声が切れた。

 ミースは理解した。

 明らかにルインは面白がっている節があって、ゼウスクラスPTとアレスクラスPTを戦わせようとしているのだ。

 とんでもない教師である。

 そもそも経験豊富な彼女なら、確証は模擬戦の段階で――いや、それ以前ですら気付いていただろう。

 ゼウスクラスPTは溜め息を吐きながら、強制的に始まりそうな初対人PT戦闘に備えるのであった。

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