三つ首のダンジョン、二層目
一層目のエレメント・クレイドロンたちを速攻で倒して行き、ミースたちは二層目と到着していた。
すぐ目の前にいたのは骨型のモンスターだ。
「さぁ、倒して進むわよ!」
「あ、プラム待って――」
プラムは一層と同じように視界に入った敵を初級魔術で撃ち抜こうとしたのだが、そうはいかなかった。
「え? あれ?」
骨型のモンスターは初級魔術を食らっても、弱ってはいるが倒れてはいなかった。
手に持った斧を振り上げながら走って来る。
そのままヘイトを取ってしまったプラムが狙われたのだが――
「よっしゃ! 頼れる盾の登場や!」
待ってましたとばかりにゼニガーが盾で防ぐ。
「ようやくワイら、前衛の出番やな!」
「前衛の……? あっ、そうか。忘れてたわ。このカースドスケルトンって敵は打撃に弱いんだった」
プラムは事前にダンジョンの情報を教えられていたことを思い出した。
一層目はエレメント・クレイドロンで魔術主体が効率良く、二層目は物理主体で前衛の見せ場になるという。
具体的には三種類の敵がいて、打撃、貫通、斬撃の弱点に対応しているという。
「久しぶりにこれの出番だ!」
骨型のモンスター――カースドスケルトンは打撃に弱いタイプだ。
そのためにミースは懐かしのひのきの棒+99に持ち替えた。
「我流――〝日ノ軌〟!」
太陽の軌跡を描くような打撃攻撃。
カースドスケルトンは一撃で肋骨ごと背骨をへし折られ、くの字になりながら散らばった。
それで体力が尽きたのか魔素に還っていった。
「ありがとう。ミース、ゼニガー。助かったわ」
「ううん、こちらこそ一層目で頼りっきりだったからね」
「二層目はワイらに任せて休んどき」
プラムは首を横に振って、強い否定の意思を示した。
「PTなんだから、精一杯自分にできることをするわ」
そう言うと、プラムは精霊を使って初級強化魔術を唱え始めた。
「ファイア・アタック。ウォーター・マジック。エアー・スピード。アース・ディフェンス――」
攻撃の赤、精神の青、素早さの緑、防御の茶色。
四色のバフが三人にかかった。
「ちょっと手間はかかるけど、一応は攻撃以外も使えるのよ。それに回復魔術もできるから、どんどん死んでいいわよゼニガー!」
「死ぬ前提かいな!」
「ルイン先生のときも思ったけど魔術師は心強いね。でも、プラム。無理そうだったらちゃんと言うんだよ」
ミースから心配されている。
プラムとしては少し嬉しくなってしまった。
「そ、そのときはちゃんと言うわよ……! それより、先に進んでリュザックのヘルメスクラスに勝たないと!」
「そうやな。たぶんリュザックはかなりの短期間で攻略しそうやで」
「二人とも、アレスクラスのオーロフたちを忘れてない……?」
ミースがツッコミを入れるも、ゼニガーとプラムは『無い無い』と手をヒラヒラさせて否定をした。
「どう考えてもワイらより遅いはずや」
「そうそう、あの三人が前にいるなんてありえないわ。もし前にいたら、またイカサマでもしてると思うけど、今回は各クラスの担任が使い魔を付けてるからそれも無理よ」
ミースたちの後ろにも、ルインが使い魔を付けている。
不正をした場合は担任にわかる仕組みだ。
「でも、もし担任がイカサマに気付かないか、黙認していたら?」
「……ミースはんは時々、とんでもないことを言うなぁ……」
「あはは、ごめん。ちょっと考えすぎだったかな。先に進もう」
そこからもモンスターたちが待ち構えていたのだが、ミースとゼニガーは基礎的な修行もこなしていて地道にパワーアップしている。
それとプラムのバフもあって結果的に難なく二層を突破していく。
風のように駆け抜けてしまった二層だったが、捕捉しておくと――動く食人植物であるダンシングプラントには、銀の剣+99の斬撃による弱点攻撃で攻略。
ドロップはダンシングプラントの葉。
巨大なハチであるジャイアントワスプには、青銅の槍+99の貫通による弱点攻撃で攻略。
ドロップはワスプスピア。
ちなみにカースドスケルトンのドロップは、呪われた骨だ。
〝呪われた〟というおどろおどろしい名前の割に、骨粉にしたものが植物の肥料として使われたりして重宝される。