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ダンジョン突入前の準備

 放課後、三人は校門前に集まる約束をしていたのだが、先にミースとゼニガーだけがやって来ていた。


「ちょいええか、ミースはん」

「聞きたいことは何となくわかる。プラムのことだろ?」

「さすがワイの親友や。プラムミントはんは魔術適性がなかったはずやろ? それでどうやってダンジョンで戦うんかと思うてな」


 誰しもが知っているプラムの魔術適性ゼロ問題。

 クラスメイトが危惧しているようなことは、すでにミースも考えていた。


「裏で何かやっているようだし、魔術が使えるようになったんじゃないかな……」

「まぁ、そう考えるのが妥当やなぁ……。1属性……良くて2属性でも使えるようになっていれば戦術の幅も広がって助かるんやけど――」

「お待たせ~!」


 というところで、プラムが遅れてやって来た。

 さすがに二人は空気を読んで、今話していたことを中断した。

 あのプラムが教室で『一位にしてあげるわ!』と言ったのだ。

 そこは信じているので、本人が明かすまでは黙っておくつもりである。

 三人が集まったので、ミースは本来の話題を切り出した。


「それじゃあ、クラス対抗ダンジョン攻略戦の確認をしておこう」

「おう、任せたでリーダー(・・・・)

「ふふ。頼んだわよ、リーダー(・・・・)

「……言われ慣れないなぁ」


 親しみを込めてなのだろうが、明らかに遊ばれている気がする。

 諦めたような表情をしながらも話を進めた。


 ――クラス対抗ダンジョン攻略戦のルールはこうだ。

 まずは3クラスが、各3人PTを作って、ダンジョンの三つの入り口から入って最初にボス討伐した者が勝者となる。

 これはルインがホームルームで説明したものだ。


「それで、ダンジョンに潜るための事前準備をしようと思う」

「準備? ダンジョンってただ入ってモンスターをしばき上げるだけじゃないの?」

「しばき上げるってプラム……」


 何やらお嬢様から出る言葉とは思えないが、見えない場所で逞しくなったのだろうか。

 気を取り直してミースは説明をした。


「プラムは制服のダンジョンが初挑戦だったから知らないかもだけど、広いダンジョンだと中で泊まることになるんだ」

「へ~、そういえば教科書の先の方にあった気がするわ」

「うん。普通だと、まだそんな大きなダンジョンに潜らないからね」


 潜ることになる三つ首のダンジョンは四階層構成で、ルインが言うには二層か三層で一泊することになるという。

 本来は一日程度の徹夜ならぶっ続けで行くこともできそうなのだが、生徒の安全を考慮して、夜間になったらダンジョン内を進んではいけないという特殊ルールだ。

 ちなみに各担任が管理する使い魔が尾行するらしいので不正はできない。


「それで具体的には何を用意するのよ? どんな方針?」

「それはキャンプ用品で、方針は――」


 ミースとゼニガーは聖杯のダンジョンで泊まったときのことを思い出しながら、顔を見合わせてから答えを言った。


「「快適さ!」」




 ***




 三人は商店が建ち並ぶ区画にやってきていた。

 その中にある大きなダンジョン用品店に入る。

 ふと、ルインが『持ち込むのは300銅貨までだぞ~』とワケのわからない冗談を言っていたのを思い出したが、今回は資金を気にせず高い物を買うと決めている。

 以前は装備だけに金をかければ良いと思っていたが、実際に聖杯のダンジョンで二泊三日してわかったのだ。

 キャンプするときの快適さも、ダンジョン攻略に影響してくると。

 人間は機械ではない。

 快適に夜を過ごせないと、充分な実力を発揮できなくなるのだ。


「さてと、まずは寝袋からかな」


 冒険者学校が近くにあるためか、かなり品揃えが充実している。

 貴族の学生が金を落としていくのだろうが、今だけはそれに感謝だ。


「以前はマントにくるまって寝てたのを思い出すでぇ」

「え、マントにくるまって夜寝るって……ウソでしょ……」


 しみじみとしたゼニガーの語りに、お嬢様であるプラムがツッコミを入れる。


「メッチャ背中がゴツゴツで痛いし、たまらんかったわぁ~」

「それにここだと寒さで震えることになりそうだね。床が土だったら湿りそうだし」

「……私、準備せずに行ってたら一睡もできなかった予感がするわ」


 三人はそれぞれ意見を出しながら、暖かそうな高級寝袋を選んだ。

 使われている素材はフィアノルン産のダウンで、表面は丈夫で手触りの良いサンドワーム革で防水などが施されている。


「次は~……テントかな」

「あっ。そ、そうやな~……」


 ミースはチラッとプラムを見た。

 ゼニガーもそれで察する。

 以前は男二人と自動人形のレドナのPTだったために、そこまで気を遣わずに済んだ。

 しかし、今回は年頃の少女であるプラムがいるのだ。

 さすがにテントを用意しなければならない。

 当の本人は首を傾げていたが、可愛い桜色のテントを見つけるとはしゃぎながらそれを選んだ。


「私これ~!」

「じゃあ、俺は茶色のを」

「ワイは灰色のこれでええかな」

「ちょっと男子ぃ~、地味ぃ~!」


 そうは言われても、ミースとゼニガーはオシャレに気を遣う方ではないし、年頃の女子の好みを知る機会もなかったのだ。


「こっちのクマさん柄とかどう?」

「ぜ、ゼニガーに譲るよ」

「……これは緊張感なくなりそうやなぁ」


 さすがに男二人からは不評だったようで、クマさん柄は回避されたのであった。

 あとはテントの下に敷くグランドシートや、調理道具、頑丈な椅子とテーブルなどのキャンプ道具(ギア)を購入した。

 普通なら荷物としてかさばってしまうが、そこはミースの大収納があるので平気だ。

 同時にお値段もかさばってしまったのだが、制服を売った金で何とかなった。


「よし、キャンプ用品はこれくらいでいいかな。あとは――」


 そこでミースのお腹がぐぅ~と鳴ってしまった。

 申し訳なさそうな顔をしつつ提案をする。


「ご飯を食べながら、キャンプで使う食材の相談でもしようか」

「賛成や~。食事も大事やしな」

「それじゃあ、ダンジョンでは私が料理の腕を振るってあげるわ!」


 そんなこんなで、楽しいダンジョンの事前準備が行われたのであった。

明けましておめでとうございます!

ちょっとまだ忙しいのが続きそうで投稿ペースを戻せないのですが、色々と頑張っているので今年もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 明けましておめでとうございます。 本年も面白い作品をよろしくお願い申し上げます。 ゼニガー「要は今年も作品書いてくれっちゅうコトか」 ミース「身も蓋もない言い方だね」
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