表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/126

冒険者学校の模擬戦

 ミースとオーロフの模擬戦、開幕はオーロフが動いた。


「食らえ、ミースぅ!!」


 少し遠めから、一気に距離を詰めての重い一撃。

 冒険者学校で教えている王国剣術というのは、多対多での合戦から発展したものだ。

 オーロフの一撃も、多数の敵を前に距離を取り、一瞬で近付いて甲冑の上から叩き砕くという想定だ。


「くっ!」


 一方、ミースも王国剣術の構えで防御を取る。

 オーロフのような攻撃の型もあるのだが、基本的には防御寄りなのが王国剣術だ。

 騎士の甲冑を前提として、相手の一撃を耐える。


「くけけ! この程度かぁ! ミースよぉ!!」


 卑怯にも木剣の中に鉄心を仕込んでいたオーロフの攻撃は、必要以上に重かった。

 本来の形なら一撃離脱なのだが、オーロフはバシバシと乱打を続ける。

 ミースはひたすら耐え、呟いた。


「なるほど、たしかに我流より王国剣術の方が防御をしやすいな……」

「なーにブツブツ言ってるんだ! 念仏でも唱えてんのか!?」

「ありがとう、オーロフ。やっぱり実際に戦うと、身体が覚えてくれるみたいだ」

「……は?」


 オーロフは違和感を覚えた。

 なぜ、普通の木剣のミースが、鉄心入りの木剣の攻撃を受けてへし折られないのか。

 それは木剣+99にしたからというイカサマなどではない。

 攻撃力1の木剣に魔力を流して強化しているからだ。

 冒険者なら誰しも魔力で身体や武具を強化しているのだが、短期間で相当の経験を積んでいるミースは、備わっている才能と合わせて無意識に超強化しているのだ。


「ここでタイミング良く我流に切り替えて――」


 攻撃をするというのは同時に隙が出来るという事でもある。

 その瞬間を狙って、ミースは形を王国剣術から我流にチェンジした。

 一瞬で強固な岩石から、鋭い刃になったように錯覚する程だ。


「今ッ!!」

「ひっ!?」


 ミースは大きく踏み込んで距離を詰め、ただの木剣で鉄心入り木剣を横薙ぎにする。

 オーロフの鉄心入り木剣は簡単に砕かれ、中の金属が露出してしまった。

 ミースは、尻餅を付いたオーロフの首元に木剣を突き付けながら、『あれ?』と気が付いた。

 しかし、それを咎めようとはしなかった。


「冒険者なら、相手がどんな力を隠し持っているのかわからないしね。ありがとう、勉強になったよ、オーロフ」

「ック!! 舐っめやがって!!!! 模擬戦を運良く勝っただけで調子に乗るな!! クラス対抗のダンジョン攻略では覚えておけよ!」


 ミースは手を差し伸べたのだが、それを払いのけられた。

 オーロフは鉄心入り木剣を投げ捨てて、どこかへ行ってしまった。


「勝者は小僧ってことだな」


 審判をしていたルインがそう宣言をすると、周囲の学生たちが湧き上がった。


「すげぇ! あのオーロフ・ハンマークを簡単に倒しちまった!!」

「ミースお前……平民で実技も微妙だと思ってたけど、本当は凄いんだな……」

「オーロフは偉そうだったからスッとしたよ!」


 喝采巻き起こる学生たちに囲まれ、ミースは困惑してしまう。

 こういうのは苦手なので、ゼニガーとプラムに助けを求めようとするが――


「ワイらのPTリーダーなら当然や」

「そうね、ミースはもっともっと強くなるわ」

「い、いつから俺がPTリーダーになったのさ!?」


 そんないつもの三人のやり取りになってしまったのであった。

 これで日常が戻ると思ったが――そこへ一人の男がやってきた。


「貴様がミースか?」

「は、はい」

「我はリュザック。ヘルメスクラスに所属する者だ」


 男――ダークブルーの短く刈り込んだ髪と瞳の青年、リュザック。

 ミースと同年代のはずだが、凄まじい威圧感だ。

 眉間にシワを寄せ、不機嫌そうに告げる。


「弱い、つまらぬ。もっと自分の力を使いこなすのだ」

「え、あの……?」


 いきなり初対面の相手にこう言われてもワケがわからず、ミースは聞き返すしかできない。

 横にいたゼニガーは友を馬鹿にされていると思い、一歩前に出た。


「ちょいちょいちょい。あんさん、なんなん? ミースはんが弱いっちゅーなら、さぞリュザックはんは強いんやろ――うっ!?」

「そうだ」


 気が付いたらゼニガーは吹き飛ばされていた。

 思い当たることといえば、事前にリュザックが人差し指をゼニガーの身体にゆっくり当てただけだ。


「な、なんやこれは……」


 ゼニガーは起き上がりながら、攻撃を受けた箇所を手で触って確認した。

 特に怪我は無く、衝撃で吹き飛ばされたようだ。

 この感覚は以前、ウィル・コンスタギオンにやられたモノに近い。

 ゼニガーはリュザックを探すが、すでにその姿は無かった。


「い、いない……。何者や……あいつ……」

「リュザック……たぶんすごく強い……」


 ミースも同じようにそれを感じ取っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の評価欄☆☆☆☆☆をポチッと押して
★★★★★にしてくれると応援になります!

いつも読みに来て頂き、ありがとうございます!

「ブックマークに追加」も便利なのでオススメです!



こちら、書籍版です!

『親ガチャ失敗したけどスキルガチャでフェス限定【装備成長】を引き当て大逆転 2』
著:タック
イラスト:桑島黎音先生

レーベル:ムゲンライトノベルス
ISBN:978-4434357480
発売日:2025年6月2日
価格:1650円

結城にこ先生によるコミカライズ一巻も発売中です!
【↓各種情報はこちらのリンクから↓】
ehl67y8ien731tpx2nqihmp1yqc_pw5_160_1nq_1vca4.jpg ehl67y8ien731tpx2nqihmp1yqc_pw5_160_1nq_1vca4.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ