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最強の石になる

三話目

(……あかんな。密かに練習していたダイヤモンドになれたんやけど、もうヒビが入ってきとる……)


 ゼニガーから後ろは見えないが、気配で恐ろしい数のモンスターが増え続けているのがわかる。

 それらはすし詰め状態で潰れたり、ドラゴンゾンビに踏まれたりしているらしい。

 阿鼻叫喚だ。

 ミースとレドナは無事なのだが、ゼニガーの身体には亀裂が走っていた。


(骨までいっとるな、こりゃ……。崩れ落ちてないのが奇跡みたいなもんや)


 身体がダイヤモンドになっていても、不思議と痛みを感じる。

 激痛と呼べるレベルなのだが、今際(いまわ)(きわ)なのか変に冷静だ。


(ああ、この町に来てから楽しかったなぁ……。ミースはんと冒険して、自動人形っぽくないレドナはんと喧嘩して……そりゃもう楽しかった)


 ピシピシと身体が砕けていく音が聞こえてきた。


(特に昨日、色々と話せたのが良かった。まぁ、最後の思い出の光景になってもうたのは、あのダンジョンの石の天井――……石?)


 ゼニガーは思い出していた。

 ダンジョンの不思議な石の事を。

 ダンジョンと魔力が通じているらしく、ほのかに明るかったりする不思議な石だ。

 そして、その最大の特徴も思い出した。


(試してみる価値は……あるな! どんなゴミスキルを引いたとしても、それをどう使うかはワイ――ゼニガー・エンマルク次第や!)




 ***




 その後、スタンピードとなったモンスターたちは第五階層から上へと移動していなくなっていた。

 残されたのはすし詰めで死んだモンスターの大量のドロップ品と、階段を破壊して押し広げようとしているドラゴンゾンビだ。

 麻痺状態が時間経過で解除されたミースは、ようやく声が出せるようになった。


「ゼニガー!! ゼニガー!!」


 命を張って、砕けかけの石像となって守ってくれた親友の名を叫ぶ。

 ダメージを負って動けなくなっていたレドナも、やっと声を絞り出す。


「マスターミース……。クルーゼニガーはあれだけの長時間、敵の攻撃にさらされていました……もう……」

「そんな! ゼニガー! 一緒に冒険するって約束したじゃないか!!」


 この絶望的な状況の中、レドナはかける言葉もない。

 ただ事実として、どうしようもないということだ。

 残った二人ではどうやっても状況を打開できない。

 しかし――


「おいおい、そないなシケた面すんなや……」

「ぜ、ゼニガー!?」

「クルーゼニガーの声が……」


 その瞬間、ゼニガーの身体は石から生身に戻っていた。

 血が勢いよく噴き出すくらいに重傷だが、たしかに生きていた。


「どうや、不死身のゼニガー様はピンピンしとるでぇ……!」

「よかった! ゼニガー、生きていたんだね!!」

「クルーゼニガー、生きているのが不思議なくらいの瀕死であります」


 倒れかかるようにして、ゼニガーは二人に抱えられた。

 青銅の兜+99はどこかに飛んでいってしまっていて、いつものオールバックはボサボサになっていた。


「しかし、クルーゼニガー。邪霊でないのなら、どうやって生き残ったのでありますか?」

「邪霊ちゃうわ! ええか、ワイはとっさの機転で最強の石になったんや」

「最強の石?」

「そう、どうやっても砕けん〝ダンジョンの石〟や! なんとこれになったら、ダンジョンと繋がってメチャクチャ硬くなったんや」

「なるほど……ダンジョンを構成している石なら、たしかにダンジョン自体を破壊するくらいのパワーがなければ破壊できませんね」


 レドナは頷きつつも、ゼニガーの傷口を指で(つつ)いてみた。


「あだぁっ!?」

「だったら、もっと早く思いついてください。傷だらけで結局戦えないじゃないですか。ボスはどうするんですか」

「おまっ!? レドナはん、ワイに厳しないかぁ!?」

「まぁ、命がけで守ってくれたんです。感謝だけは……してやるであります」


 そう言いながら、レドナはナイチンゲールのコアを取り出した。

 そして、それを腹の開閉部に入れてデータを使用する。


「れ、レドナはん!? それは使うと危な――」

「うるさいですね。今使わずに、いつ使うというんですか」


 ナイチンゲールのコアを使用すると、人格を乗っ取られてしまう危険性があるらしい。

 そんなことは気にせずレドナは数秒間、目を閉じて再起動をした。

 ミースとゼニガーはそれを見守る。


「レドナ……?」

「わはは、私はナイチンゲール。身体を乗っ取ったぞ」


 レドナはいつものように無表情で言ってから、二人が笑っていないのを見ると――


「失礼、よくある自動人形ジョークであります。システム正常作動中(オールグリーン)。当機は、これより習得した【ヒーリング】を実行するであります」


 レドナの手の平が星弓を撃つときのように展開して、そこから優しい光が溢れてくる。

 それをゆっくりとゼニガーの傷付いた身体に当てていく。


「おぉ、すごいでぇ……傷が塞がっていく……」

「傷は治りますが、疲れは残るであります。ご注意を」

「充分や! これでまた戦えるで!」


 ゼニガーとレドナは、ミースを見つめた。

 情熱と冷静さを感じる。

 イシを受け取ったミースはコクリと頷く。


「ここから逆転……いや、大逆転しよう!」


 聖杯のダンジョンボス――ドラゴンゾンビの討伐が開始された。

面白い!

続きが気になる……。

作者がんばれー。

ダンジョンボスの討伐開始だ!

などと感じて頂けましたら、下の方の★★★★★をポチッとして評価をもらえますと作者が喜びます!


一手間ですが、すごく作品のためになるので、

どうかよろしくお願いします<(_ _)>ぺこり

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いつも読みに来て頂き、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] イシを受け取ったミースは …『意思』と『石』をかけた意味の『イシ』?
[良い点] ゼニガーが生きてて良かった(。´Д⊂) [一言] 今日も更新ありがとうございました<(_ _*)> ゼニガー生きてて本当に良かった♪ ボス戦が有るから油断大敵だけど(゜∀゜;)
[気になる点] 一話がこの程度の文量で連続更新されるくらいなら統合したうえで一回の更新にしてもらった方が嬉しいかな 栞と最新話のどちらかにしかいけないので、栞+1話の未読部分には直で飛べないし
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