書籍版2巻発売日記念幕間
前回幕間の続きの時間軸です。
男子寮の部屋の中、二人が向かい合って座っていた。
それは不機嫌そうなプラムと、苦笑いをするミースだった。
どうしてこんな状況になっているかというと、プラムが衝撃的な現場を目撃してオーロフの部屋を消し炭にしてしまったからだ。
その件でプラムが、ミースの部屋に押しかけた。
「えーっと……プラム、お茶でもいる?」
「いらないわよ」
プラムは自分でも分かる程にぶっきらぼうに言い放ってしまっている。
いけない態度だが、どうしてもあんな現場を見てしまったら苛立ちが隠せない。
「ミース、どうして全裸のセレスティーヌと一緒にいたのよ」
ついポツリと呟いてしまった。
これはミースへの問いかけではなくて、胸中に収めきれない独り言に近い。
「それは説明した通りで……」
「説明は聞いたわよ! 理由もわかったわよ! でも、何か……む~……なんか……!」
たしかに不可抗力だし、悪いのはオーロフだろう。
セレスティーヌにも一言いってやりたいが、同じ貴族としてその行動の重みはわかってしまう。
でも、ミースが誰か他の女性の裸を見るのは嫌だし、ミースなら間違いは犯さないと信頼していても――とプラムは思ったのだが、同時にミースと自分は正式に婚約もしていない仲だと再認識する部分もあった。
そう考えると、セレスティーヌの積極性が羨ましい。
プラムの中で悪魔が囁く。
『セレスティーヌみたいに迫っちゃえばいいのよ! そ、その……裸になって……いや、ムリムリムリ!!』
プラムの中で天使が囁く。
『(結婚は)もう少しだけ待ってね……と言ったばかりで、舌の根が乾かぬ内にそんなことできるわけないじゃない!!』
あまり裏表がないので天使、悪魔共に満場一致だった。
それでもこの言葉で表現できないようなモヤモヤした気持ちが抑えきれない。
「ミース!」
「な、なに?」
とりあえず名前を呼んでみただけなのだが、それでも何か少しだけ安心感が得られる気がする。
それと同時にまだ何かを求めたくなってしまう。
ここから先はあまり考えて発言をしていなかったように思える。
ようするに頭が真っ白になってIQ3の発言だ。
「セレスティーヌのときと同じ体勢をしたら許してあげる!!」
「えっ? いいけど……」
「いいの!?」
「まぁ、うん。プラムが腕立て伏せの止まった格好で、俺がその下にいるだけだよね?」
「そ、そう……なんだけど……」
「それだけなら」
プラムは後悔した。
ミースは純粋すぎるので、セレスティーヌが起こした行動の意味をほぼ理解していなかったのだろう。
逆に自分は汚れているのでは? と頭がクラクラしてしまう。
「あれ? どうしたの?」
すでにミースはベッドの上に寝そべっていた。
キョトンとした表情をしていて、普段のミースと変わらない。
一方、プラムはもう顔が火照っていて仕方がない。
服を着たままだし……と自分に言い聞かせるも動きがギクシャクしてしまう。
近付いて、同じベッドに手を触れるだけで意識してしまう。
「そ、それじゃあ行くわよ……」
「うん」
プラムは、ミースの上にまたがるように移動した。
身体は触れていないのだが、それなりに顔は近い。
震えが止まらない。
こんな状況でも何も思わないでいられる純粋なミースが羨まし――と思ったのだが、そこでプラムは気が付いてしまった。
下にいるミースが照れくさそうにして顔を逸らしているのだ。
「な、何かプラムが相手だと恥ずかしいな……変だな……」
「~~~~!!!!」
プラムは世界一愛おしい何かを見てしまった気がして、気持ちが限界突破で爆発してしまったので、猫のように跳びはねたあと部屋から急いで逃げ出したのであった。
というわけで今日発売の『書籍版二巻』の書き下ろしシーンに関連する話を幕間にしてみました。
書籍版書き下ろしシーンは、たぶん挿絵込みでWEB公開だとBANされるレベルなので……。
こちらのプラム幕間の方は健全!
書店用のSSや、WEBの宣伝用幕間などで久々にミースたちを書きましたが、意外とすんなり書けてしまいますね。
『書籍版二巻』や、『コミカライズ』の方が好調ならWEBで原作の続きを書けると思うので応援よろしくお願いします!
本日発売です!
(また私事ですが、10月頃から新作を2~3本くらい連続で投稿する予定なのでそちらも覚えていたらよろしくお願いします)