レッドナインVS蟲のヴィアラスカ
機体の転送時、ミースとレドナは胸部にあるコックピットへと移動していた。
珍しい鉄の箱の中、ミースはキョロキョロと見回してしまう。
気になって、後ろの方に座っているレドナに尋ねてみた。
「なんか数字やらグラフやらがいっぱい表示されてるけど、どうすれば……」
「ご安心ください、マスターミース。この人型同化兵器ZYX――レッドナインは文字通り人の思考と同化して動きます。つまり自分の身体と同じような感覚であります」
「なるほど……」
「そこの操縦桿を握りつつ、ZYXの右手を動かしてみるであります」
ミースは言われた通りに右手を握るように意識だけすると、同時にモニターに表示されるマニピュレーターも同じ動きをしていた。
これならコックピットのシートに座りながらでも、走ったりできそうだ。
「話は変わるけど、このZYXっていう巨人……レドナと同じ名前で呼びにくくない?」
「当機はレドナちゃんで、でっかいのはレッドナインであります。まぁ、どちらも当機の身体ですが」
「そ、そんな感じなんだ……」
ミースからしたら、このZYX〝レッドナイン〟は赤き鉄の巨人で、自動人形の〝レドナ〟とは似ても似つかないように思える。
全体的に甲冑を着込んだように角張っているし、サイズも違いすぎる。
それでもカラーや各パーツがどこかレドナっぽい意匠なのは、こちらもレドナの身体ということだろうか。
「次からはわかりやすく、ロングヘアーでも生やしますか?」
「いや、これだけ大きいと汚れが大変なんじゃ……」
「と、当機は汚れたりしないであります! いつもピカピカ!」
一緒にダンジョンに潜っていたとき、結構土埃で汚れていたのだが、それは言わないでおいた。
「あ、それと報告であります」
「報告?」
「十剣人が悪魔の軍勢を殲滅完了。これで本拠地が襲われて団員たちが虐殺されるという事態を回避できました」
「そうか、よかった」
「それともう一つ些細な報告ですが――目の前の蟲のヴィアラスカがしびれを切らしています」
「あ~……」
ミースは思い出したかのように正面のモニターを眺めた。
そこにはうろたえつつ、何かを叫んでいるヴィアラスカがいた。
「どうやら急にレッドナインが出現して、臆病なくらいに警戒しているようであります」
「なるほど。……それでレドナ、何か武器はあるか?」
「ZYXパンチはどうでありますか?」
「……いや、それはちょっと」
現在、レッドナインの姿は丸腰だ。
格闘戦で挑むというのも可能だが、ミースはあまり得意ではない。
「色々とありますが、まずは簡単な兵装からいきましょう。右手に転送――〝光剣〟」
ミースは右手にズッシリとした重みを感じた。
実際の右手ではなく、同化しているレッドナインの右手に金属の筒が出現していたのだ。
そこに意識を向けると、棒状の白い光が伸びて剣のようになった。
「剣は良いね、使い慣れている」
「もっと使い慣れている物にカスタマイズするであります」
レドナが何かを操作すると、光剣の輝きが緑色に変化した。
「風竜剣+99とリンクさせました。同じような感じで使えるはずであります」
「ありがとう、試してみるよ!」
レッドナインと同化したミースは光剣を構えた。
まだ多少の違和感もあるが、少しずつ慣れてきている気がする。
『て、テメェ! そのおかしな武器でやろうってのか!?』
「急に弱気になったな、蟲のヴィアラスカ」
『そっ、そんなわけねぇだろ! まだまだオレ様の方がでけぇからな!!』
超巨大悪魔である蟲のヴィアラスカに対して、レッドナインは五メートル程度だ。
たしかに身長差はあるが、普通に戦えるレベルとなっている。
「そうか、それじゃあ――その背を縮めてやる」
ミースは機体を稼働させ、前方に走り出した。
ズシンズシンと音が響くのが普段と違うと感じる。
視界が高い、歩幅が広い、金属の臭いもする。
自分が巨人になってしまった気分だ。
本当にこのまま戦えるのだろうか? という考えがよぎる。
だが、数多の強敵や、数え切れない修練を経て得た経験は裏切らない。
最適な動きを選び、調節し、レッドナインならではの型を作っていく。
『くっ、くるなぁ!!』
蟲のヴィアラスカが長い触手で襲ってきた。
ミースはそれを軽々と避ける。
『なにぃ!? デケェくせに速ぇ!?』
回避と同時に踏み込み、蟲のヴィアラスカの懐で攻撃スキルを発動させた。
「これが風竜人の怒りだ! 喰らえ――ウィンドストライク!」
光剣が風を纏い、疾風のようになぎ払われる。
『ゲギャアアァァァァ!?』
蟲のヴィアラスカの魔力防御を難なく突破し、ウィンドストライクが袈裟懸けに斬り裂く。
肩から斜めに切断。
頭部とほぼ半身を地面にボトッと落とした。
『ウガァァァ……いでぇ……いでぇよ……ヂグジョウ……チビのくせに……』
「身体を切断されて、お前の方がチビになったんじゃないか?」
『こ、この野郎……オレ様に向かって大きさで馬鹿にするとは……』
怒り狂った蟲のヴィアラスカは、周囲にいた兵士たちを触手で掴んだ。
「ヒィィィ!? おやめくださいヴィアラスカ様ぁぁあああ! ギャアアア!!」
それを接着剤にして、切断されて落ちた身体をくっつけていく。
『どうだぁ……驚いたかぁ……!?』
「いや、知ってる」
『は……? なんで……』
「レドナ、光剣は慣れた。次の武器を頼む」
「了解、マスターミース。……では、サポートをするのでレドナの十八番を一緒に放ちましょうか」
「レドナの十八番か……いいね! 面白い!」
蟲のヴィアラスカは焦っていた。
圧勝できるはずだった十剣人相手にもやられ、赤き巨人まで出てきたのだ。
しかも、七大悪魔王としての再生能力を見せつけても、まったく驚きもしない。
この異常さ、まるで運命自体を敵に回しているように感じる。
『ひっ、ひぃぃぃ!?』
急いで戦場まで無様に逃げ、そこら中に落ちている死体で身体を大きくしていく。
見る見るうちに身体が倍加していくが、それでも頭の中から〝恐怖〟が拭えない。
『な、なんなんだ……なんなんだよお前らぁ!?』
「機能解放――〝流星弓〟」
レッドナインの左腕部が変形し、展開したバックパックと合体して巨大な弓を形作った。
「勝利を創り出せ――【創世神の右手】」
ミースは己のワールドスキルを発動させる。
レッドナインに乗っているせいか、力を押さえるための我流〝守ノ照〟は必要ないようだ。
初めて全力でいける。
「外道を矢で射殺しましょう」
「創世神よ、その星を創りし右手を授け給え……」
「赤龍とリンク……使用承認。左手の制御は当機が行います」
引き絞られる極光の弓矢。
星をも破壊する可能性を秘めたZYXの禁忌兵装。
今、ミースとレドナの意志が一つとなった。
「「大罪を貫き通せ――〝九の流星搦げ邪滅す矢〟!!」」
巨大な流星と見間違うような神気の輝きが矢となり、ヴィアラスカへ向かっていく。
さらに巨大になったヴィアラスカだったが、その輝きの前では〝小さい〟存在だった。
『お、オレ様は七大悪魔王だぞ……!? こんなところで……こんなところで死ぬはずがねぇぇぇぇええええッッ!!!!』
地を奔る流星の煌めき。
断末魔だけを遺して、その巨体は消滅していた。
「高性能な当機たちの勝利であります、ぶいっ!」
七日間連続キャラデザ公開、最後は七大悪魔王『毒のゼンメルヴァイツ』です!
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書籍版一巻が売れれば、二巻が出る……それはイラストが付くということでみんなハッピー!
そしてその次が三巻……つまりこの辺りが範囲なはず! 真レドナの神イラストが見たいぞぉー!
読者さんは見たくないですか? 私は見たい!
というわけで、無料で評価ポイントを入れてご協力して頂いたり、お財布に余裕があれば書籍版をご購入などして頂けると嬉しいです。
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