迫り来る悪魔の軍勢
一難去ったのだが、まだ最後の一難が残っている。
片角王を倒してダンジョン化は解除できたので、これでエンシェント・デーモンからの被害は出ていないはずだが、この先が本番でもある。
「おかえり、レドナ。本当はゆっくり話したいんだけど――」
「状況はある程度把握しているであります。この本拠地――〝赤龍〟のAI代理もしているので」
「なるほど」
そうなると、この時間軸で起きた本拠地内のことは説明を省いても平気だろう。
「十剣人や、団員たちのデバフはどう?」
「現在、赤龍が本格稼働したため、神殺しの団には加護がかかっています。それにより中和され――……マスターミース、もしかして、これを予想して?」
「博打だったけど、何とかなったよ」
以前、本拠地でハインリヒが言っていたのだ。
レッドハートを修復すれば、メンバー全員に加護がかかると。
デバフを打ち消すためには、もうその手段しかなかったのだ。
「さてと、それでまだ問題がある。もう少ししたら、本拠地の場所を特定した超巨大悪魔――七大悪魔王、蟲のヴィアラスカが攻めてくるんだ」
「……外部に確認しました。約五分後にやってくるでしょう」
「それをどうにかしないと……」
「マスターミース、良い知らせと悪い知らせがあります。どちらからお聞きになりますか?」
「え?」
まだミースが知らない情報をレドナが入手したのだろう。
これよりもさらに予想外の状態となれば、ミースの手に負えるものではない。
胃が痛くなりそうな状態で話を進める。
「そ、それじゃあ悪い知らせから……」
「蟲のヴィアラスカの足元に数千規模の軍勢を観測しました」
「悪魔軍か……! このときからすでに蟲のヴィアラスカの部下が……」
蟲のヴィアラスカだけでも厄介なのに、あのときと同じような数千の兵士が随伴しているのだ。
状況は絶望的である。
「随分と頭を悩ませていますね、マスターミース」
「数千の兵士を相手にするなんて……今の状況じゃ……」
「それでは良い知らせです。デバフを打ち破った十剣人たちが出撃しました」
ミースはすっかりと忘れていた。
一騎当千の彼らがいることを。
「それならルーさんの宿敵である蟲のヴィアラスカも一緒に倒してくれそうかな……」
「宿敵なのですか? それでは、そちらは当機たちで倒しましょう」
「え? いや、蟲のヴィアラスカは大きいし、生半可な攻撃じゃ再生されるから巨大な一撃がないとダメで――」
「一緒に特大のZYXパンチをブチかましにいくであります」
モニターに格納庫の一角が映し出され、そこには赤く巨大な〝何か〟があった。