果ての無双
ダンジョンと化した本拠地の中、エンシェント・デーモンの門番は周囲を警戒していた。
この個体は生前も門番を任されていたのだが、かなりの臆病者だった。
常にビクビクしながら周囲を警戒する。
この本拠地の門番として配置された今でも、同じようにビクビクしながら鉄壁の門周辺を見回っていた。
『グロゥ……?』
何者かがやってきた。
外部から転送されてきたのだろう。
見た目はただの少年だ。
エンシェント・デーモンとはかなりの体格差もあり、戦闘は余裕だと思われた。
それでも門番として全力で殺さなければならない。
鍛え上げられた兵士以外を殺すのは忍びないが、エンシェント・デーモンは表情に出すこともできずにダンジョンからの命令を実行するしかない。
誇りある片角王の軍勢としての矜持、それは持つことを許されない。
しかし、少年に殺意を向けた瞬間――気付いた。
既に勝負がついていた。
『グォ……ウ……』
炎の風がエンシェント・デーモンの身体を通り過ぎていて、上半身と下半身が別たれていたのだ。
恐ろしい程の速さだ。
目の前にいるのはただの少年ではない。
純然たる本物の戦士だ。
エンシェント・デーモンの門番は、無辜の民を殺すことなく、最期に戦士に殺されたことを感謝しながら魔素へ還った。
***
ミースはエンシェント・デーモンの門番を倒して、自分が強くなっていることを実感していた。
十年間の経験は無駄ではなかったのだ。
「……それにしてもあの門番、最期に笑っていた? いや、気のせいか」
そんなことを考えながら奥へ走っていく。
目指すは片角王がいる制御室だ。
もちろん、道中にはエンシェント・デーモンたちが待ち構えている。
『グオォ!』
今だからわかる。
彼らの一撃は、ただのモンスターのそれではなく戦士の一撃だ。
ミースもそれに応えるような一撃で屠る。
迫ってくるエンシェント・デーモンの大きな身体。
風竜剣を構え、十年間続けた素振りと同じように放つ。
風と火属性が合わさり、燃える剣風で斬り裂く。
切れ味鋭く、エンシェント・デーモンの強固な身体を斬り裂いて、内部から赤々と焼いていた。
一体、二体、三体……と最速で倒して進む。
彼らの攻撃はミースには届かず、未だ傷一つない状態だ。
ルーと一緒でも苦戦していた頃から比べれば信じられない。
これが恵まれた才能を持った少年が一心に剣を振るった、十年分の重さなのだ。
道中のエンシェント・デーモンをすべて倒して、ついにミースは到着した。
彼らの頂点、片角王が待つ制御室へ。






