サンドワーム退治
早朝――冒険者ギルドでエアーデから正式な依頼書をもらい、ミースは砂漠へやってきていた。
「エアーデさん、年齢のことを気にしていたな……。たしか三十歳は過ぎていたと思うけど、当時とあまり外見は変わらないような……」
エアーデの並々ならぬ努力によって保たれている外見などつゆ知らず、ミースは砂漠にサクサクと足跡をつけていく。
依頼書によると、どうやらドライクルから南に少し進んだ場所にワンドワームの巣ができてしまっているらしい。
そのサンドワームが町の方まで移動してくると危険なので、先に退治しておこうというクエストだ。
「サンドワームか~……懐かしいな」
十年前、始めて砂漠で戦ったのもサンドワームだった。
あのときと同じ銀の剣+99で戦うことになるとは感慨深いものがある。
「もっと強い武器に変更できてればよかったんだけど、もうダンジョンが使えなくてドロップ品も流通してないからなぁ……」
悪魔たちによってダンジョンが封鎖され、その余波でドロップ品も出回らなくなった。
結果的にドロップ品を使う【装備成長】も使う機会がなくなったというわけである。
ひたすら素振りを繰り返してスキルレベル5→6になって、同種合成だけではなく異種合成が可能になったのだが、それも試す機会がなくなってしまった。
もう残っているのは身につけていた防具と、銀の剣+99だけだ。
スキルレベル4の自然修復がなかったら、ここまで長持ちもしていないだろう。
「今はある物で戦わないとな。それに素振り以外の実戦もして、来るべきに備えて……」
途中まで言って頭を振る。
考えてはいけない――〝未来〟と〝過去〟のことは考えてはいけない。
今は〝現在〟のことだけを精一杯しなければならないのだ。
そうしないと――……。
「っと、丁度何も考えずに戦えそうな相手がやってきた。……ありがたい!」
巣のテリトリーに入ったミースを察知したのか、サンドワームがやってきた。
その数はなんと十。
蠢く巨体が肉の森を思わせる。
ミースは銀の剣+99を構えた。
十年間続けてきた素振りの構え。
【創世神の右手】や〝守ノ照〟も使わない。
ただの素振りの構えで待ち、飛びかかってきた一匹に向かって銀の剣+99を振る。
「以前は体液を喰らって麻痺で大変だったけど――」
剣風が砂漠を別つ。
それはまるで神話で海を割る伝説のようだった。
たったの一振りでサンドワームの巨体ごと真っ二つだ。
凄まじい風圧で体液もかかっていない。
「うーん、あんまり鍛錬にならないな」
ミースはため息を漏らしながら、カフェの仕事をこなすよりも力を入れず、剣を振るう。
二匹目、三匹目とサンドワームがなます切りにされていく。
もはや人間業ではない。
人の形をした剣の修羅だ。
剣に乗る想いは迷いがなく、魔力で強化された銀の剣+99は何者をも斬り裂く。
三十秒も経たずにサンドワームは全滅させられていた。
「あとの細かい調査は任せていいって話だし、これで終わりかな――……ん?」
砂漠の向こう側から男がやってくるのが見える。
この時世に珍しいのと、その男がフラついていたので気になった。
ミースは足早で向かって声を掛けた。
「大丈夫ですか? 近くにドライクルがあるので案内しま――」
「た、大変だ! ついに悪魔たちが人界を滅ぼし始めた! 占領じゃない、町をぶっ壊して回っているんだ! もう成長の町ツヴォーデンもやられちまった……。超巨大な悪魔と……毒のゼンメルヴァイツに……」
男はドライクルに知らせようと急いでいたのだろう。
必死の形相で息も絶え絶えだ。
「毒のゼンメルヴァイツ……ウィル・コンスタギオン!」
ミースは激情を思い出した。
レドナの仇である、ウィル・コンスタギオン。
剣の柄を必要以上に握りしめていた。
今日の夜はゼニガーのキャラデザが活動報告で公開されます。
ぜひ、お越しくださいませ……と言いつつ、ゼニガー需要はあるのか? と訝しむタックであった。