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魔王と勇者、共闘する

マリーはスケルトンに作ってもらった紺色のワンピースに着替えて魔王の執務室に戻る。

鎧や兜とともに大きな鞄も持ってきた。

「人間界の聖女がそなたを受け入れる準備をすでに終わらせておるそうだ。そして、そなたは人間軍とともに最終決戦の地に出向くこととなるだろう」

「はい」

マリーはしっかりとうなずいた。


「マリー、人間界へ向かう前に左手を見せよ」

言われるまま左手を差し出すと、魔王が触れた小指の封印の赤い指輪が消滅した。

「これでそなたの封印は解いた。勇者としての記憶はないだろうが、その紋には歴代勇者達のことが記録されておって、そなたにはそれを生かす力があるらしい。詳しくは人間界に行ったら聖女に聞くがよい」

「わかりました」

うなずくマリー。

「では行くがよい。次に会うのは決戦の地であろう。その時はよろしく頼むぞ」

「はい!」

マリーは鎧や兜とともに転移魔法により人間界へ向かった。



作戦は魔界の魔将軍と人間界の賢者が立てた。

各軍は最終決戦の地と決めた位置へ大厄災の怪物を追い込む。

途中、魔界も人間界も多くの街が被害を受けたが、速度が遅いこともあって進行方向の住民は可能な限り避難させた。

大厄災の怪物が本気の戦闘状態となった時、発する瘴気をものともせず近づけるのは魔界の魔王と人間界の勇者だけである。

そして最終決戦の地は魔王と勇者がかつて戦った場所でもあった。


巨大な岩のような物質で出来た大厄災の怪物が魔王と勇者のいる場所へとたどりついた。

勇者はその証でもある面を着けているため表情は見えない。

「行くぞ、勇者よ」

「はいっ!」

だが、魔王と勇者をもってしても戦闘は難航する。

中心にあるコアとなる部分を破壊しなければならないのだが、そこに近付くことさえ難しい。

勇者が魔王に向かって叫ぶ。

「私が気を引きますので、その隙にコアをお願いします!」

「わかった!」


勇者は覚えて間もない飛行魔法で、大厄災の怪物に捕まるギリギリのところを攻撃しながら飛びまわる。

その隙に魔王がコアへの距離を縮めていく。

「あっ?!」

大厄災の怪物がとうとう勇者を捕らえた。その瞬間を魔王は視界に捉えていたが、

「魔王様、今ですっ!」

怪物の発する轟音の中、魔王にはマリーの声がはっきりと聞こえた気がした。

ありったけの魔力をこめて大厄災の怪物のコアに大剣を突き立てると、急激に光を失い始めた。

「マリー!!」

魔王が叫ぶが、大厄災の怪物に握られたままの勇者はまったく動かない。

のたうちまわって引き下がろうとした怪物は、最終決戦の地から少し離れたところで大爆発を起こして崩壊した。

猛烈な爆風が収まった後、完全に光を失ったコアに突き立てられた魔王の大剣は発見されたが、魔界・人間界の両軍の懸命の捜索にもかかわらず、現場周辺からは勇者を発見することはできなかった。




そして魔王の元に人間の勇者発見の報告が入ってきたのは、大厄災の怪物との決戦から10日後のことだった。


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勇者は獲物を逃さない【連載版】
連載版始めました

「名前のない物語」シリーズ
人名地名が出てこないあっさり風味の短編集
― 新着の感想 ―
[一言] 今度は勇者ちゃんが魔王さまのことをわすれちゃったらどうしよう!?
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