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魔王と聖女、緊急談義する

魔王とマリーが南の離宮へ出かけてから数ヵ月後。


魔王城の執務室では、側近から手渡された書類に目を通していた魔王が顔をしかめていた。

そんな折、マリーに関して文のやり取りとする間柄になっていた人間界の聖女から魔法通信で『急ぎで会いたい』との知らせが届いた。

魔王の方も聖女に聞きたいことがあったため、聖女を魔王城の応接室に召喚する。


「急な申し出に応じていただき、ありがとうございます」

聖女が頭を下げる。

「いや、こちらもそなたに用があったのでな。思うに互いに同じ用件なのではあるまいか?」

「おそらくは。つい先日、大神殿にてかつてない大きな神託がございました」

真っ直ぐに魔王を見つめる聖女。

「うちの方にも先見の魔女というのがおってな、その者からあまりよくない知らせがきておる」


「「大厄災の怪物」」


魔王と聖女は同じ名を口にした。

「やはりそのことであったか」

魔王がため息をつく。

「はい。人間界ではすでに賢者が中心となって大神殿や各国との調整を始めております」

「こちらも魔将軍達が動き始めておるが、そなたが一番気にかけておるのは勇者のことであろう?」

今度は聖女がため息をつく。

「その通りです。すでに勇者の復帰について各国からの要望が大神殿に寄せられております」

「して、人間界では勇者のことはどのように伝えられておるのじゃ?」

「賢者の案により『生存は確認済だが療養のため所在は明かさない』ということにしてあります」

「なるほど。して、そなたはどうしたい?」


聖女はしばらく沈黙したが、やがて魔王を真っ直ぐ見据えて口を開いた。

「この未曾有の危機、魔界と人間界が力を合わせて立ち向かう必要があります。そのためには勇者復活が必要と考えております」

「だが、あの娘は勇者としての記憶はない。さらに今は何の修練も積んでおらぬではないか」

聖女が一呼吸おいて口を開く。

「勇者の紋には歴代勇者の知識と技能がすべて刻まれております。それに今は貴方に力を封印されたその身には神聖力が蓄えられた状態でありましょう。記憶がない今、使いこなすためには多少の修練は必要でしょうが、おそらくは十分に実戦に耐えうるものと考えています」

「聖女としてはそう答えるであろうな。して、そなた個人としてはどう考える?」

聖女がキッと魔王を睨む。

「戦わせたくないに決まってるでしょう?!戦いを知らない今のあの子をいきなり未知の怪物にぶつけるなんてしたくない。だけど神託では並の人間じゃいくら束になっても太刀打ちできず、魔王と勇者の力を合わせてもギリギリって言われてるわ。この世界を守るためにはあの子が必要なのよ・・・」

聖女の瞳からは涙がこぼれ落ちる。


「・・・そうか。実はこちらの先見でも怪物と直接ぶつかれるのは我か人間界の勇者だが、どちらか一人では厳しいと言われておる。やはり勇者の力が必要であろうな」

魔王は立ち上がった。

「そなたは急ぎ人間界に戻り、勇者復活の準備を。マリーの説得は我がしよう」

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