勇者、測られる
ある日の午後。
いつものようにマリーが魔王の午後のお茶のお供をしていると、ドアをノックする音がして被服担当のスケルトンの男性が執務室に入ってきた。
「魔王様、こちらが先日いただいたご意見から起こしたデザイン案でございますぅ」
何枚かの紙を魔王に手渡す。一通り目を通した魔王はスケルトンに返した。
「うむ、よかろう。このまま進めてよいぞ」
「はぁい、ありがとうございますぅ。それじゃマリーちゃん、お茶のお供が終わったらちょっと採寸するから私の作業室まで来てねぇ」
スケルトンの男性はマリーの頭を軽くなでて去っていった。なでる手も骨なので少々硬い。
「あの、採寸って服を作るんですか?」
マリーが魔王に問いかける。
「ああ、近いうちに南の離宮へ行くのにそなたも連れて行こうと思うてな」
「でも外出着ならもういくつも作っていただいてますけど・・・?」
「南の離宮があるのは少し暑いところでな、涼しく過ごせるように今回は半袖の服を作ってもらうことにしておる。茶が終わったら採寸に行くがよい」
マリーはよくわからないが従うことにした。
魔王のお茶の供を終えたマリーは、スケルトンの男性の作業室を訪ねた。
部屋の中にはたくさんの生地や糸が並んでいる。
「いらっしゃ~い!待ってたのよぉ」
「あの、半袖の服を作ることはわかったんですけど、確かこないだ採寸したばかりのような気もするんですが・・・」
チッチッチと右手人差し指の骨を小さく左右に振るスケルトン。
「あのね、マリーちゃん。貴女はまたちょっと背が伸びたでしょう?それに今後の成長も見越して服を作るから、前のままというわけにはいかないのよぉ」
そう言われては返す言葉もないので、マリーはおとなしく身体のあちこちを細かく採寸された。
それから数日後にはマリーの夏物の服がほぼ出来上がり、また試着という名のファッションショーが開催された。
確か1泊するだけと聞いているのに、どうしてこんなに服が必要なのだろうか?
そして自分の服が出来るたびに城のみんなが集まって論争が始まるのはなぜなのだろうか?
マリーにはやっぱりよくわからなかったが、なんだかみんなが楽しそうだからまぁいいかな、と思った。




