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魔王、過去を知る

魔王は人間界の聖女とマリーについて情報交換することにした。

魔界では魔法、人間界では神聖力などと呼ばれているが、これらの根本は同じものであるため、その力を使って互いにやりとりをする。

魔王からはマリーの近況を伝え、聖女からは人間界にいた頃のマリーのことを教えてもらうためだ。


聖女から得た情報によると、マリーは赤子の頃に地方の孤児院の前に捨てられていたそうである。本当の両親のことは聖女にもわからないとのことだった。

孤児院では名前はつけられずに番号で呼ばれており、『ローズ』と名づけたのは勇者として見出した聖女だった。

幼くして大神殿預かりとなった勇者は、外の世界を知らずに育つ。

大神殿では食事も修行の一環であり、甘いものは時々出される果物くらいで、子供が好きそうな菓子が出されることなどもちろんなかった。

魔王討伐の旅でも聖女が常に一緒だったため自由に食べることは出来なかったが、一度だけ聖女の目を盗んで戦士が買い与えてくれた屋台の甘い揚げ菓子は勇者にとって衝撃だったらしい。もっとも後で2人とも聖女にこっぴどく叱られたそうだが。

マリーが甘味にこだわるのは、そのあたりが起源なのかもしれない。


魔王は聖女への礼としてマリーの描いた絵や刺繍したハンカチを送る。

聖女からはマリーへということで人間界のいろんな地域の菓子が送られてきて、魔王とマリーの午後のティータイムにたびたび供された。

「これ、美味しいですね!」

ニコニコしながら食べるマリーに魔王は菓子のお礼の手紙を書くことを勧めた。そして、

「あの、できればかわいい便箋と封筒が欲しいです」

と言い出したので、時々魔王とともに人間界の街へ買いに出かけた。魔界にも文具がないわけではないが、マリーとしては人間界の方が種類も多くて好みであるらしい。

聖女からマリーへの手紙も認めてはいるが、勇者に関わることを書いた場合には手渡さないことは告げてある。もっとも聖女も魔王城でのマリーの暮らしを見て思うところがあったのか、書いてくることはまずなかったが。


そんなやりとりを重ねていくうち、時折マリー以外の情報も交換するようになった。

マリーの生まれた国は、内乱や他国からの侵攻などの末に隣接する大国に併合された。かつての政治は腐敗していたが、もともと鉱物などの地下資源が豊かな国だったので支配した大国は復興に力を入れているらしく、民衆からの支持も得ているそうだ。

故郷が立ち直ったとしても、身内も知人もいない地にマリーが帰ることはないかもしれないが。

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