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勇者、拾われる

「魔王様、北限の森にて人間軍の勇者が発見されました」

「・・・ほう?」

魔王城の執務室で側近の報告に少し驚く魔王。


つい先日の魔王軍と人間軍との最終決戦は、人間軍の勇者からの提案により魔王と勇者の一騎打ちで勝敗を決することになった。

双方の陣営を下がらせて勝負は始まった。最初のうちこそ互角ではあったが両者の力量の差は明らかで、人間軍の勇者は魔力による大規模な爆風で吹き飛ばされて行方不明になり、人間軍は撤退していった。

「北限の森とはすいぶん飛んだものだのう。技量不足であったとはいえ、味方の被害を抑えるため一騎打ちを申し出るなどなかなかの者であったな。丁重に葬ってやるといい」

「いえ、勇者は生きております・・・かろうじてではありますが」

「なんだと?」

「敗軍の将とはいえ、すでに終わった戦で瀕死の者にとどめを刺すのも憚られたので、今は北の塔にて幽閉しつつ治療中でございます」

魔王城の北の塔は昔から高貴な者の幽閉に使われている場所である。

「そういえば戦の際には兜と面を着けていて顔を見ることもなかったな。一度くらいは見ておこうかの」

魔王は立ち上がった。


厳重に結界の張られた北の塔の最上階。部屋の隅にはボロボロの鎧や兜が置かれている。

ベッドに横たわる勇者は、短い黒髪で小柄な細身の身体のあちこちが包帯でぐるぐる巻きにされていた。

その姿を見て魔王は唖然とする。

「これはまだ子供ではないか?」

「人間でいうと10代の前半といったところでございましょうか。仰せの通りまだ子供ではありますが、左手の甲に勇者の証である紋がありますので間違いございません。身に着けていた鎧や兜にも見覚えがございますし」

魔王の表情がみるみる怒りに変わる。

「人間どもはこんな年端もいかぬ少年を戦の矢面に立たせていたというのか?!」

「魔王様、恐れながらこの者は少年ではなく少女でございます」

「・・・は?」

魔王が再び唖然とする。

「髪も短く、まだ子供の体型なのでお間違えになるのもしかたがないかとは思いますが、治療に当たった医師が確認おります」

「ますます許せんではないか!人間どもはまだこんな幼い娘になんということをさせるのだ?!」

思わず声を荒げる魔王。

「落ち着いてくださいませ、魔王様」

「あの者の治療は続けるように。意識が戻ったら直接話がしたいので我を呼べ」

いまだ怒りがおさまらないまま魔王は執務室へと戻っていった。

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