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Βιβλίο【ヴィヴリオ】  作者: 青茶
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明るく笑う狂気2

「そうですね、今度は9月11日なので出席番号9と11の人!」


イネスはまた次へと当てていく。

生徒たちはなるべく先生が楽に死ねるようにと考えていた。誰も先生を助けようとせず。


「はやくしないと私が決めますよ〜」


「……一瞬で終わるように」


「はい、11番は一瞬で、と」


黒板には生徒たちが発言したことを全て書いていた。


苦しくない、痛くない、熱くない、冷たくない、刺さない、切らない、残酷でない、殴らない、蹴らない、火を使わない、水を使わない、電気を使わない、血が出ない、一瞬で終わる


「9番の方、まだですか?」


もうこれ以上思い浮かばないのか9番の生徒は震えながら必死に考えていた。


「はやく言わないと、あなたも」


「ひっ、も、もう少しでででです」


ただひたすらに、どうすれば楽に死ねるかを考えている。


「ま、満腹で」


9番の生徒が言ったのは満腹だけだった。満腹がどうしにつながるのか周りは何もわからなかったがイネスはクスリと笑った。


「最後の晩餐から思いついたのかな?確かマルコ・フェレーリの作品だったかな。ふふっ。おもしろい。わかった」


イネスは笑いながら黒板に満腹と書いた。


「最後に私のことを馬鹿にしている君」


音守は自分で自分を指差して「俺?」と周りをキョロキョロとみた。


「そう君。さあどのような死に方がいいと思う?」


手に顎を乗せて唸っている様はオーギュスト・ロダンの作品、”考える人”のようであった。考えるときにそのポーズをとる人の大半は”考える人”のことを意識してあえてしているだろう、音守に至っては確実にそうだ。



「えっとなあ、快楽はどうでしょう」



「……最後の晩餐と言ったからなの?」



「レオナルドのやつですか?」



「やつって……。あなたは一体レオナルド・ダ・ヴィンチのなんだって言うのよ」



「お友達です」



イネスは無視して黒板に快楽と書いた。

手についたチョークの粉を払い、生徒たちに黒板の字を声に出して読むように言った。


「「苦しくない、痛くない、熱くない、冷たくない、刺さない、切らない、残酷でない、殴らない、蹴らない、火を使わない、水を使わない、電気を使わない、血が出ない、一瞬で終わる、満腹、快楽」」



「皆さん本当に先生思いなんですね!素晴らしい!いかに楽に先生を殺すかをあなたたちが考えてくれたもの。誰一人として殺さないとか、死なせないとかそう言う偽善者がいないことがわかったわ。このクラスの子たちは見込みがありそうよ。だから今からあなたたちのその優しさに対して私は冷たさで返してあげましょう」


イネスが黒板に文字を付け加えていった。


”苦しくない”を斜線で消し”苦しむ”と書き、

”痛くない”を斜線で消し”痛い”と書き、

”熱くない”を斜線で消し”熱い”と書き、

”冷たくない”を斜線で消し”冷たい”と書き、

”刺さない”を斜線で消し”刺す”と書き、

”切らない”を斜線で消し”切る”と書き、

”残酷でない”を斜線で消し”残酷にする”と書き、

”殴らない”を斜線で消し”殴る”と書き、

”蹴らない”を斜線で消し”蹴る”と書き、

”火を使わない”を斜線で消し”火を使う”と書き、

”水を使わない”を斜線で消し”水を使う”と書き、

”電気を使わない”を斜線で消し”電気を使う”と書き、

”血が出ない”を斜線で消し”血が出る”と書き、

”一瞬で終わる”を斜線で消し”永遠に終わらない”と書き、

”満腹”を斜線で消し”飢餓”と書き、

”快楽”を斜線で消し”苦痛”と書いた。


イネスが生徒たちの発言したことと正反対のことを黒板に書いていくのを見て血の気がひいていた。もしかして今からこれを見せられるんじゃないか。私たちがこれをしなくてはいけないのではないかと。


「では今からこれを実践して先生を殺しましょう」


相変わらずの笑顔で言った。


「あっ」とイネスが言うと生徒たちは体を震わせ下を向いた。


「でもこの”飢餓”だけは今からするには無理なんですよね。だからこれは消しましょう」


黒板消しを使い丁寧に消していく。


「後、”苦しむ”と”痛い”と”残酷にする”と”血が出る”、”永遠に終わらない”と”苦痛”はここに書いてあることをすれば必ずなることなのでこれも消しますね」


淡々と消していく。


「ではでは、私が適当に何に何を使うか書いていきますね」



”熱い”は熱湯

”冷たい”はドライアイス

”刺す”は針

”切る”はナイフ

”殴る”は拳

”蹴る”はそのまま

”火を使う”はアルコールランプ

”水を使う”はタオル

”電気を使う”はスタンガン


「このような感じで行きます!皆さん人の死をしっかりと見てくださいね」



一人の女子生徒が騒ぎ始めた。


「そんなの見れない!見たくない!もう嫌だ!家に返してよ」


声をつまらせながら、泣きながら言う女子生徒は見るに耐えない状態だった。


「私、うるさいのって苦手なのよ。だからごめんなさいね」


女子生徒の口にガムテープを貼った。

それでも尚、何かを言い続けている女子生徒のもとに行き「そんなに人の死を見るのが嫌なの?」と聞くと女子生徒は泣きながら大きく頷いた。




「そんなに嫌なら見えないようにしてあげるわ」



女子生徒の瞼が閉じないように手で押さえた。

イネスの手にはナイフが一本握られていた。

ゆっくりと左目の前にナイフを近づけていくと声にならない声を上げながら女子生徒は顔を動かした。


「あまり動くと手元が狂うじゃない」


スーっとナイフを横に動かした。


「んんーーーーーーー!!!!!!!!!」


女子生徒の左目が横に切れた。


イネスは再び瞼を閉じないように手で固定した。


「今度は右。これで何も見ずに済むわよ。ってあらあら、高校生にもなってお漏らし?」


右目からは涙、左目からは血。鼻水に尿。

女子生徒は恥ずかしいと言う気持ちは一切なく恐怖でしかなかった。



「もうそれだけ体液まみれに免じて右目はそのままにしといてあげるわ」


イネスの手が瞼から離れてすぐ、左目をナイフでくりぬいた。

不意のことで一瞬何をされたかわからなかったが激痛が走ってきた。


「んんーー!!!!!ううぇ、ぼうぇ」


あまりの痛みに戻してしまった。



「あらあらかわいそうに。ちなみにこの左目」


ナイフに刺さったままの左目を女子生徒の前に持ってきた。


「切れたままにしておくと腐って脳にまでダメージがいくからね、とってあげたことに感謝してほしいぐらいよ」


女子生徒の耳には一切入ってこなかった。激痛の末気絶してしまったのだ。



「では気を取り直して、今から始めるわよ!」



イネスは針を手にとって先生の耳元でささやいた。



「始めは針を爪の間に挿していきましょうか」

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