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Βιβλίο【ヴィヴリオ】  作者: 青茶
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明るく笑う狂気

葵が出て行った後の教室に先生が入ってきた。


「突然であれなんだが、転校生がくるそうだ。」


突然も突然。

急に転校生が来るとなるともちろん学生は騒ぎ始めた。

男子か女子、かっこいいのか可愛いのか。背が高いのか低いのか、ほとんどが両極端のことを先生に聞いていた。


「まだ私も聞いたばかりでな。詳しいことは何にも聞いていないんだ」


先生はこう言えばとりあえず大人しくなるだろと思ったのだろうか。別に知っていようがいまいが学生は関係なく話し、騒ぐ。


すると扉が開いた。

開いただけでそこから誰も出てこない。

教室内の視線はその扉に集中していた。

転校生が入ってくるのを今か今かと待ち続けていると後ろの扉がすごい勢いで開いた。

前の扉に意識が入っていたため、後ろで扉が大きな音を立てたのにほとんどがびくっと体を動かした。





「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」





教室は静まりかえった。

それもそのはず入ってきたのは音守だったからだ。


「あれ、みんなどないしたん?みんな大好き音守潤ちゃんですよ!」


誰にも何もウケていないのも気にせずこの静まりかえった教室でボケ始めているのを我慢できなかったのか一人の生徒が「転校生つれてこいよ!」と言うと周りもそれに合わせて帰れだの、面白くない、ばかなどどさくさに紛れて普通の悪口を言う生徒も出てきた。


「え、ちょっと先生、転校生って何のことなん」


「今さっきまで転校生が来るって言う話しをしていてだな……。まあタイミング悪かったんだよ」


「なあーるほど。だからみんなこんなイケメンな俺に突っかかるわけですな?納得納得」


誰もツッコミなど入れない。

しかも悪口は増える一方だった。

流石に誰も何も言ってくれないし、悪口ばかり言われるので音守は深いため息をついて「しょーもないわぁ……」と自分の席に戻って行った。



「もう一度言っておくが、転校生がくるので今みたいに騒がないように」



先生が再度確認するかのように、特に最後の騒がないようにを強調していた。


「じゃあ大人しくするように」


先生が扉に手をかけようとしたが勝手に扉が開いた。


少し驚いた様子だったが、単純に反対側から誰かが開いたと思ったのだろう、特にそれ以上のそぶりを見せることはなかった。


扉の向こうに立っていたのはこの校内で見たことない人だった。何故誰も見たことがないかと言うと茶髪の女子だったからだ。


この学校は黒髪が校則となっているため、茶髪、金髪など髪の毛を染める人がいないのだ。連休明けとかで髪の毛を染めてきた人がいれば即座に呼び出し、その場で染め直されるので誰もしてこないのだ。


「えっと、君が転校生?でいいのかな」


その茶髪は先生の方を一度見るも、無視して教室に入ってきた。


生徒たちはその容姿を見て騒ぐことがなかった。

身長は180cm近くあり茶髪は腰ぐらいまでで、顔はかなり整っており泣きぼくろが左目の下に2個あった。

もちろんモデル並みの足の長さだった。


そんな美形な女子が急に入ってきたので男子は当然、女子も固まってしまった。一人を除いて。




「いやあ、えらいべっぴんさんやん」



音守が自分の席からその転校生に向かって言った。


「でも残念やなぁ」


席を立ち上がり転校生に向かって歩いていく。

転校生は音守の言葉が通じていないのか無視しているのかはわからないが表情は変わらず教室に入ってきたままだった。

転校生との距離がかなり縮まったところで音守が転校生に向かって指をさした。


「そのお胸。小学生やん」



転校生は自分の胸を押さえて顔を赤くした。

その仕草も非常に魅力的で先生も生徒たちも数秒固まっていた。

だが先生はハッとし、音守を席に引っ張って行った。


「女子に向かって何を言うんだお前は!」


「そう怒らんといてくださいよ先生。ほらあれっすわ、関西人のノリってやつですわ」


「そんなの聞いたことないし、ただのセクハラだそれは」


先生は転校生の方に向かい「すまない」といい音守があんな感じのやつなので気にしないでやってくれと言った。



「Me cago en tu puta madre」



転校生が下を向いてぼそっとつぶやいた。誰も転校生が何て言ったか聞き取ることができなかった。


「先生、少しいいですか?」


転校生が日本語を普通に喋り近づいて行った。


「すいません。失礼しますよ」


先生の顔に袋がかぶせられた。

転校生はすぐに先生の両手を後ろに回し手錠をかけた。

膝裏を蹴り教室に跪かせ足をインシュロック(結束バンド)で締め上げた。立つことができないように締め上げたインシュロックと手錠を同じくインシュロックで固定した。


動くこともままならなくなった先生は喚いていた。


「こんなことをしたら一発で退学だぞ!わかっているのか!はやくほどきなさい!」



「先生、少し静かにしていただけるとありがたいのですが」


転校生は喚いている方を見て言ったが、逆に怒り、さらに喚き出した。


「仕方ないですね」


カバンのチャックを開け中を探り始めた。


「ジャジャーん」


自分で効果音を言いながら取り出したのはヘンテコなツボの様な形をしたものとガムテープだった。


「静かにしない先生が悪いんですよ」


先生の口にその壺をつけてガムテープでぐるぐる巻きに固定した。


「これはですね、叫びの壺とか言っていくら叫ぼうが声が小さくなる便利グッズなんですよ。先生はご存知ない様ですけど、皆さんは知ってますか?」


生徒たちに問いかけるが今までの一連の流れを目の当たりにしているので誰もうんともすんとも言わなかった。自分たちが同じ目に合う可能性があると思ったからだ。


「いまいち反応が薄いですね、まあ騒ぎ出したら同じ様にするしかなくなるのでその点、皆さんは賢いですねこの先生より」


先生は喚き続けているがほとんど声が聞こえない。生徒たちも恐れて動くことも声を出すこともできていなかった。


「それでも一応皆さん、椅子に固定しますね」


手を後ろにして椅子と手足をインシュロックで縛り上げていく。


突然生徒の一人が椅子もろとも倒れた。

急なことに転校生もその方向を見て足早に歩いて行った。


倒れた生徒は委員長だった。息を吸っておらず、胸を押さえながら苦しそうに息を吐くばかりだった。この状況に耐えきれず過度なストレスとなり過呼吸を起こしたのだ。


「あらあら、これは。……そうですね」


転校生はその生徒に口を重ねた。


周りは一体何事なのだと、倒れた本人でさえそう思った。

だが思いとは裏腹に症状は次第に落ち着いていた。


ゆっくりと優しく口を離した。


「ファーストキスだったらごめんなさいね」


転校生は優しく微笑んだ。


生徒たちは助けてくれたのだと思い転校生はいい人なんじゃないか、その先生が悪いことをしたから気触ることを言ったからあんな風になっているのだと思ったため助けたことに対して歓声をあげた。


始めは満足そうに微笑んでいた転校生だがなかなかおわらに歓声に苛立ち、先生の髪をひっぱり教卓の近くまで引きずりぶつけた。突然のことに生徒たちは静まりかえった。


「Ynes・Salas=Caballero イネスと呼んで」


急に自己紹介を始めたため生徒たちは戸惑った。


「今から騒いだらこの先生がどんどん傷ついていくことになるわ」


それを聞いた先生が体をよじらせて何か言っているが何も聞こえない。

言っている意味がわからなかったのだろうか、生徒の一人が泣きそうな声でどう言うことだのだめだの言い出した。


「見た方が早いわ。こうなるの」


イネスは躊躇することなく教卓の上にあったボールペンの先を先生の肩に軽く乗せて上から思い切り、全体重を乗せて刺した。


先生は突然の痛みに叫んだがツボのせいで何も聞こえない。


「わかった?」


生徒たちは首を動かすことも何もしなかった。できなかった。


「イェスと捉えましょう。最近この教室の人で変なこと、動き、発言をしている人はいるかしら」


イネスが生徒たちに問いかけたらすぐに一人の方を全員が見た。

もちろん音守の方だった。


「いやいやいやいやいや。ちょい待ち!」


「そう、あなたが?」


「なんのことかさっぱりやねんけど!おかしなことをしてるのはいつもやん!ほら、さっきも」


イネスの表情が少し歪んだ。どうやら胸のことは気にしている様だった。


「まあいいわ。特に何もなかったということで」


「これから」




「皆さんを」




「開放します」


生徒たちの顔に生気が戻った様であった。先生も同様である。


「ですが、先生には死んでもらいます」


先生 に は 


生徒たちは先生だけ死んで自分たちが助かると確信したがそれを顔に出すものはいなかった。


「どの様な死に方がいいでしょうか。では先生っぽく、そこの窓際の女性さん!」


突然当てられしかも人の死に方を決めるなど高校生にできるはずもなかった。


「だんまりですか。困りました。じゃあ真ん中の列の真ん中のあなた!さあどうします?」


イネスはずっと笑顔で人の死に方をどうするか聞いていた。


「……苦しく、なく、苦しくない方が」


当てられた生徒は頑張って最適であろう答えを言った。



「あらあら、優しいですね。その優しさに答えてあげましょう」


イネスは黒板に”苦しくない”と書いた。


「では次!」


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