いつもの下校
「ふえ〜、やっと授業が終わったよ!帰れるよ!」
葵京は伸びをしながらそう言った。
6時限が終わり、生徒が帰路につくこの時間。
葵京は部活動も何もしていないため授業が終わり次第すぐに帰るようにしている。
それには理由があった。
一つ 藤山葵、もといお兄ちゃん共に帰ること。
二つ 音守潤、もといイケメンと共に帰ること。
葵京は音守のことをなぜか好いているのである。
長い廊下を短距離走選手のごとくダッシュで走り、長い階段を三段跳び選手のごとく三歩で飛び降り、お兄ちゃんのいる教室へと向かった。
「今日の世界史の先生へんやなかった?」
「そんな気はしたが、雰囲気作りのためにじゃないか」
「まあせやったらええねんけど」
二人がそう言いながら教室の戸を開けようとすると急にとが凄い勢いで開いた。
開いたと言うか、壊れた。
その壊れた扉の奥に葵京が立っていた。
なぜか仁王立ちをしドヤ顔を決めているが変な汗がタラタラと流れている。
しばらく沈黙があった後壊れた扉と、葵と潤を交互に見る葵京。
「あちゃー、家の扉開けるみたいに開けちゃった!」
「いや、何をどう間違えたらスライド式を引っ張るんだよ」
「ぶっふぉ、さすが葵京ちゃんや。最高やんか」
「へへ、そうかな。潤先輩はやっぱりやっさしいなあ!」
「意味がわからないよ…。また呼び出しを食らうじゃないか」
これがこの三人の日常。
もう何年も続いている日常。
毎日変わることのない日常。
笑顔でこの坂を行き来する日常。
「葵京ちゃん、今日も夕日に照らされてえらいべっぴんやなぁ〜」
「いつもいつもいいこと言ってくれるよね!潤先輩!」
「俺は思ったことしか言わん主義やからな〜」
「本当にお世辞が上手なんだから!」
「もうお前ら二人付き合っちゃえよ」
そう愚痴をこぼしながら、三人であの坂を下って行った。