家族のもとへ
委員長の前の話を聞いて、そして今も死んだりしていることを知ってしまった葵は何て声をかけたら良いかわからなかった。
「やっぱり、そうなるよね」
委員長は困った笑顔を浮かべていた。
変わらず接して欲しいとお願いしていたことを叶えるのはひどく難しい。今まで通りとはいかないだろう。
それでも葵は変わらず接したいという思いはあった。
「で、委員長は今まで何回死んだん?」
音守は普通に聞いた。
「え、あ、えっと」
突然の質問に驚きすぐに答えることができなかった。
「ああ、めっちゃ死んでるんやったら数えてもないか」
「……うん」
「お前そんなことを聞くのは流石に」
「いやいや、同情とかせーへん言うたで、俺」
「言ってたけど!」
「いいの。私はそっちのほうがありがたい。藤山君、どう声をかけていいかわからないと思うけど私のために色々考えてくれてありがとう。無理に繕わなくていいよ、できないならできないで」
できない。以前みたいに話すことはできなさそうだった。
それでも葵は普段通りにしようと思っていた。
「えぇー、藤山あかんな。男して終わってるわー、人としても終わってるわー」
またもやむかつく顔をしながらため息をつきオーバーリアクションをしながら言う音守は楽しそうだった。
「お前に人として終わってると言われる筋合いはないよ」
葵は音守とのやりとりは気持ちが良かった。気が合うのかはわからないがこの雰囲気が好きだった。
三人はそこの部屋でしばらく色々話した。
色々と言ってもほとんどが先ほど学校で起こったことなのだが。
イネスたちのこと。なぜ学校に来てあんなことをしたのか。この辺の学校は全て同じになっているのか。全てがもしも、の話だが三人はそれについて話しまとめた。
「じゃあ、最後に必ず燃やしていたのはその紙を見つけるためだったのか」
「多分そうだと思う」
「じゃああれか、あの三人もその紙が体ん中にあるってことか?」
「多分そうだと思う」
「委員長ー。さっきから多分多分しか言ってへんやん」
実際多分としか言いようがない。今日起こったことだけで情報をまとめようとしても全て想像でしかない、想像の範疇を超えることができない。
「その紙を集めてどうなるんだ」
「私に色々聞かないでよ。わかるのはさっき話したことぐらいなの!」
「委員長が怒っているところ初めて見たきするわ」
委員長は色々聞かれてほとんどがわからないことだらけだったためついに許容量を超えたようだった。
「いい?もう一度言うけど私はさっきいったことしか知らないの。これ以上何を聞かれても多分だし、知らないの!」
「そ、そうか」
だんだん委員長が駄々をこねる小さい子のようになってきたため、もう何も質問しなくなった。
しばらく静かな状態が続いていた。相変わらず音守はボリボリとおにぎりせんべいを食べ続けていた。
「どうするんだ、そろそろ移動した方がいいんじゃないか」
イネスがここに来るのではと思っていた。燃やしたと言ってもあいつが紙を持っているのであれば効く事はなく灯油が燃え尽きたらすぐに駆けつけると。
そこで葵は自分の家に移動しないかと提案することにした。そこに妹の葵京が戻ってきるのではないかと少しでもそう思いたかった。
音守と委員長は同意し、葵についていくことにした。
三人は葵の家に向かい走り始めた。
走っている道中には特に何も起こることはなく無事に家へと着くことができた。
葵は葵京が帰ってきていることを願い、鍵を開け玄関を開けた。
ゆっくりと開かれる扉の向こうに帰ってさえいればいつもなら少し小さい靴が右の端に置かれているはずだ。
心臓の音がうるさい。息が荒くなる。いてくれ。頼む。
扉を開けたその先には靴があった。
右端に脱いであったが雑に散らばっていた。
葵は靴を足で雑に脱ぎ葵京のいる部屋へと走り出した。
毎朝毎朝言い合いしているリビングを片目に階段を上った。
「葵京!無事か!」
勢いよく扉を開けた。
その先にはベットに座っている葵京がいた。
「お兄ちゃん、おかえり」