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Βιβλίο【ヴィヴリオ】  作者: 青茶
13/29

委員長宅

委員長は二人を客室へと案内した。


「お菓子と、お茶持ってくるからくつろいでていいよ」


と言っていた。

二人は畳の上で委員長がくるのを待った。

葵は慣れない正座をして委員長を待っているのに対して、音守は寝転がりながら背中を掻いていた。くつろいでいいよと言われて本当にここまでくつろぐ奴がいるとは驚きしかなかった。


「音守君、くつろいでって言ったけど……。藤山君は足崩してよ。大したものじゃないけど、よかったら食べて」


戻って来た委員長はくつろぎまくっている音守を見てため息をついた。持って来たお菓子はおにぎりせんべい、お茶は普通の緑茶だった。


「おにぎりせんべいとはよくわかってるやん」


音守は寝転がりながら机の上にあるせんべいをとりバリバリと頬張り始めた。



「それでさっきのことなんだけど、一体どう言うことなんだ」


「私の中にある話?」


「それもそうだけど、あの時切られて焼かれたはずじゃ……」


「それもこれもまとめて話すわ」


委員長は畳に腰を下ろした。


「なるべく短くまとめるようにするけど、長くなったらごめんね」


委員長は話しはじめた。


私のおじいちゃんのことは話したよね。

我が家に代々伝わってることなんだけど、死んだらそこに紙がでてくるの。出てくると言っても、遺灰の中にポツンとあるんだけど。

それを孫に渡すみたい。母さんに聞いた話じゃ孫である必要はなくて20歳以下じゃないとダメみたい。理由ははっきりとはわからないみたいで、よくわからないけど。それでその紙を私はずっと持ってたらいつのまにか無くなってたの。母さんに聞くと一週間以上持ち続けるか、その紙を食べるかしたら身体の中に入るみたい。私もよくわからないんだけどたしかに何か入っている感じがあるわけ。

それで、まあ入ってきたらなんとなくそれがなんなのかわかると言うか、知っていると言うか。そんな感じなの。


葵はぽかんと口を開けていた。

それもそうだ。意味がわからないことだらけすぎる。


「じゃあ委員長はその入ってきたものが何かわかっているのか」


「なんか厨二チックで恥ずかしいんだけど言わなきゃダメ?」


少し照れながら頭を押さえていた委員長はあんまり乗り気がしない感じではあったが教えてくれた。


「καρδιά」


「カルディヤ?」


委員長は頷き、続けた。


「そう。ギリシャ語よ。意味は心臓とか心とか」


「で、それがどうつながるんだ」


「えっとね、笑わないで聞いてほしいんだけど私、死なないの」


葵はまたしてもぽかんと口を開けて、何を言ってるんだという顔をしていた。


「死なないって、委員長はゾンビにでもなったんかいな!んなアホな!」


先ほどまで黙っていた音守が笑いはじめた。

笑わないでといったのにも関わらず笑いはじめた音守を見て委員長は肩が震えていた。

今にも音守に飛びかかりそうな雰囲気だったので話を戻そうとした。


「委員長、こいつは放っておこう」


「ほんっとぶん殴りたい気分だわ」


委員長の周りに出始めていた怒りのモヤ的な何かは収束していった。


「それで死なないって言うのは言葉通りなのか?」


「そうよ、ただ不老不死とは違って歳はとるけど」 


「そうか。その紙はどうやっても取り出せないものなのか?」


「いや……取り出せるよ」


「本当か!なら見せてくれないか」


「えっと、それは無理ね」


「なんでなんだ?」


「委員長が言いにくそうやから俺が言ったろか?」


いつの間にか笑い終えていた音守が急に話に入って来た。


「お前は何か知っているのか」


「知ってるも何も、今の話の流れでなんとなくわからんの?このおたんこなす」


非常にむかつく顔で話し続けているのを見て葵と委員長は怒りが込み上げて来た。


「めんどくさいな、はやく言えよ」


めんどくさいなんて言うなよと体をくねらせているのは非常に気持ち悪かったがいちいちかまっていたら一向に話が進まないので無視することにした。


「取り出すのは燃やすんちゃうん?」


「燃やすって、何を」


「察し悪いな。燃やして死んだらその紙が出てくるって言うことやろ」


「いやでも、委員長は燃やされたけど生きてるじゃないか」


「うーん説明が面倒くさくなって来たわ。委員長後は頼んます」


理由を知っていて委員長に振ったのか、知らないから振ったのかはわからないがまたおにぎりせんべいを手にとり寝転がってしまった。


「ほんっと、音守君嫌だわ」


「あいつはいつもあんな感じだから」


バリバリとせんべいを食べながらひらひらと手を振った。


「えっと、死ぬのは先でも後でもどっちでもいいの。燃やす、これが重要みたい。私の場合後にも先にも死ぬことはないから関係なかったけどね」


普通に笑いながらこんなことを言えるものなのだろうか。


「関係ないって。死ぬのは痛いし怖いじゃないか」


「普通なら痛いし、怖いね。でも私、普通じゃないから痛くも怖くもないんだ」


「一体何を」


「もうこの際だから二人には言うね。でも聞いたからってできれば変わらず接して欲しいな」


少し寂しく泣きそうな顔をしている委員長はどことなく愛おしく感じた。


「俺は何を聞いてもなんも思わんで。同情もせーへん」


寝転がりながら、おにぎりせんべいをまだ食べ続けながら言うこの能天気に聞こえる発言も今のは心にくるものがあった。


「……嫌いだわ、本当」


委員長の顔は笑顔になっていた。

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