俺はスマホに愛され反乱、革命を起こされる
俺はスマホをこよなく愛する男、前田徹平26歳独身だ。
まもなく、彼女との結婚を控え、慌ただしい毎日を送る日々だ。
実を言うと、俺はスマホを手にしてから、この携帯端末に頼りっぱなしなのだ。
彼女との付き合い方のハウツーもスマホで検索したし、一人寂しい夜のお供にもコイツ。
暇なときには、ネットニュース、読書に動画検索。
俺はどこに行くのも、スマホと一緒だった。
まぁ、誰しもがそうなんだろ。
スマホ依存症ってヤツか・・・まぁ、俺は軽症なんだろうけど。
ある日、結婚式の段取りに俺と彼女は式場を訪れた。
勿論、そこはスマホで検索したリーズナブルで人気の式場、場所だってスマホで一発検索だ。
式場の方がチャペルへと案内してくれる。
「わぁ、素敵」
彼女は目を輝かせる。
眩い光が差し込むチャペルは荘厳な雰囲気を醸し出している。
こういう時って、どんな気の利いた言葉を彼女に言うのだろう。
気になった俺は、チャペルに夢中になっている彼女をよそに小声で、スマホに音声検索をしてみた。
「オッケイぐるぐるっ、ブライダルの打ち合わせで、気の利いた言葉・・・」
「Xビデオですね」
ちょっ、何、何、言っちゃってるのコイツ。
しかも、MAXボリュームでなにやっちゃってんの!
チャペルに響き渡るこの場に似つかわしくない悪魔のフレーズ。
「?」
振り返る彼女とブライダルプランナー。
「・・・はは」
愛想笑いを浮かべる俺に、俺のスマホはあろうことか、それを再生しやがった。
「あっ、あーん、いっ、いっーっ、いくーっ!」
チャペルにこだまする卑猥な声。
「あっれ~、おかしいな。このスマホ」
「徹っちゃん・・・」
さげずんだ彼女の眼差しが痛い。
プランナーは苦笑いを浮かべる。
「そ、それではウェディングドレスを選びましょうか」
「はっ、はい」
俺はぎこちのない笑いを浮かべ、その場を取り繕った。
ほどなく彼女の機嫌も直り、ドレス選びに夢中になっている。
俺は今度こそ気の利いた言葉と思い、音声検索してみた。
「オッケイ、グルグル、ウェディングドレスを選んでいる彼女に贈る気の利いた言葉」
「さだまさしの「関白宣言」ですね」
「はあ?」
「見てみて、徹っちゃん」
「♪お前を嫁に貰う前に~♪」
説教ソングがはじまった。
俺は即座にスマホを切った。
「それ(式で)流すの」
「まさかっ、今日はスマホの調子がおかしいみたいだ」
「ふーん」
「やっぱりXビデオですね。好き者ですね」
突然、スマホが暴走しはじめる。
・・・コイツ!思わず俺は愛すべき相棒を床に叩きつけた。
「ズット、イッショニイタカッタ・・・アノオンナガ・・・ワタシハアナタガ・・・」
俺のスマホはそう言うと、ぷつりと・・・消えなかった。
「あーん、あーんっ!」
Xビデオが再生される。