リレー小説企画4
リレー小説企画第四話です。
小説を書くのが初めてで拙い文章ですが、暖かい目で見守っていただけると幸いです。
そして誠に勝手ながら、いくつか伏線を張りました、回収できる方是非お願いします!
夢を見ていた。いつもこの夢を見ていた。
桜が満開している神社で、僕の手を引いている少女、その長くて綺麗な黒髪が春風に靡いている。
「ね!結城くん、今楽しい?」
その少女の手の暖かさを感じながら僕は口を開いた。
「うん!すごく楽しい!秋園さんのお陰だよ!」
僕は少女の顔を覗き込もうとしたが、ハッと目が覚めた。
「頭痛てー」
そう呟きながら僕は常用している薬を二錠飲み込んだ。あの飛行機事故以来、僕はその事故よりも前の事をあまり覚えていない。だからこの夢のことも覚えていないのだ。
高一の冬に僕は家族との旅行の帰りに乗った飛行機が事故に遭い、墜落した。乗客と搭乗員を含め395人、生き残ったのはたった一人。それが僕だ。だからドラマなどで「青春を楽しもう!」なんていうことを聞くとあまり良い気がしない。
「青春はそんな生ぬるくて優しいものじゃない、青春は偽りであり、同時に不平等なものでもある。」
これが僕の今「青春」に対する解釈である。でもまあこんなひねくれている考えをしているから「本物」の青春を掴めないのかもしれない。心底では変わりたいと思いながらもその一歩を踏み出せないでいた。それはまるで全ての記憶が揃うのを待っているかのように。
そんなことを事を考えながら僕は新しい一日のための準備を始めた。朝食を済ませて誰もいない部屋に向かって「行ってきます。」と呟いた後に、僕は家を出た。これがもはや日常となっている。
朝の通学電車に揺られながら、僕は鞄に仕舞っていた読みかけの小説を取り出し、読み始めた。あっという間に学校の最寄り駅に着いた。しばらく歩いていると後ろから聞き慣れた声がした。
「清春!おっはよう!」
「おー、柊翔おはよう。」
杉本柊翔、サッカー部の10番であり、僕の親友だ。事故の後、こいつが一番僕の事を助けてくれた。感謝してもしきれないほどだ。
「今日部活来る?みんなお前の復帰を楽しみにしてるよ?」
「今日も見学しに行くよ、正式な復帰はゴールデンウィーク前にしようと思ってる。」
あの日僕は脳にひどいダメージを受けた、医者から今後運動は出来ないだろうと言われたが、どうやら僕の回復力が凄まじく高いらしい。
「なるほどねー、了解!あとさ、今週の日曜、花園神社に花見に行かない?桜がすげー綺麗に咲いてるらしいよ!」
「桜が咲いている神社?」
僕は思わず何回も見ていた夢のことを思い出した。桜が満開している神社と黒髪の少女、何回も見たことある光景だ。
「そうだよ?神社の周りにすごく大きい公園があって、ソメイヨシノが三百本も立っているよ、清春は昔毎年行ってたらしいけどね。」
「そう...なんだ...」
鳥肌が立った、あの夢はただの夢じゃなかったのか?僕の記憶が夢として見えていたのか?また頭が痛くなってきた、昔のことを思い出そうとするといつもこうなる。家に帰ってからまたじっくり考えよう。
「おい、清春?おいってば!聞いてるのか?」
柊翔の声で僕はやっと我に返った。
「え?あ、聞いてるよ。花見行くよ、ちょっともう一人連れていきたいんだけど、いい?」
「ん?いいよ、誰を誘うの?」
「櫻井さん。」
「いきなり転校生に手を出すとは貴様大胆だな。」
柊翔はニヤニヤしながら言った。
「違うよ、そういうのじゃないよ。」
僕は直感的に優美と一緒にあの神社に行ってみたいと思った、あの恐らく夢に出てきた神社に。そしたら、また何かがわかるかもしれない。
しばらく柊翔としゃべりながら学校に向かった。柊翔とは違うクラスだったため僕のクラスの前で分かれて僕は教室の扉にそっと手をかけた。今日も彼女はいるのだろうか、一瞬考えた後、勢いよく扉を開けた。誰も居なかった、どうやら今日は一番乗りらしい。と思ったのも束の間、すぐ後ろから
「おはよう!清春。」
「おはよう、朝早いな。」
「まあね。」
僕は言葉を詰まらせていた、どう花見の誘いを切り出せば良いのかが分からなかった。
「あの...さ...優美...」
「なあに?」
「今週の日曜、友達と花園神社で花見をするんだけど、優美も一緒にどう?」
僕は君の答えを待っていた、君の答えの中から僕が欲しかった物を探していたが...
「え?本当?やった!行こ!行こ!」
期待外れだった。君の言動から全く僕が求めていた感情を読み取れなかった。もしかして違うのか?と思いながら答えた。
「お、いいね!前日の夜にまた連絡するね。」
「おっけー、楽しみにしてるね!」
優美は笑顔いっぱいで答えた。そしてこの日は特に何も起きないまま終わり、僕は家に帰った。ソファに身を沈ませながらメモ帳を眺めていた。
「櫻井優美...君は一体誰なんだ?僕にとって君はどんな存在だったんだ?」
あの事故以来、僕はあまり生きている心地を感じられなかった、心にぽっかりと穴が開いているような虚無感がある。だが君は僕に過去を思い出そうとする理由をくれた、僕が思い出す事を避けていた過去を...
ただでさえ人生は儚い物なのに、僕はこのままつまらなく生きていくのか。例えこの世界の主人公になれなくても、僕はせめて僕自身の人生の主人公になりたい。その過程でもがいて、足掻いて、例え些細なことでも、それは僕が生きた証であり、僕が放った光でもあるんだ。だから僕は心の中で決めた、必ず君のことを思い出すと。
そうしているうちに僕は眠ってしまい、また夢を見た。