表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/26

閑話 穏やかな日常


 オルタスの町にやって来たばかりのエリスとラインハルトは、町の中を散策する。

 新しい町に慣れるため、そして掃除ばかりで疲れた気分転換にとエリスが誘ったのだ。

 そして自由に町を歩くなどこの世界に来て出来なかったエリスは、侯爵令嬢であることは忘れ思いっきり羽根を伸ばす。


「んーん、これ、美味しいわね!」


 エリスは出店で売っていたホロホロ鶏の串焼きを頬張り、舌鼓をうつ。

 しかしながらラインハルトは、その串焼きを手に持ったまま口にしていない。


「どうしたの? 食べないと冷めてしまうわよ?」

「そうかもしれないが、立ったまま食べるというのが……本当に良いのだろうか?」


(そっか……ラインハルトも貴族出身だし、食べ歩きなんてしたことないよね……)


 執事として侯爵家に仕えるためには、それに相応しいよう厳しくテーブルマナーを仕込まれる。

 ラインハルトも当然ながらに、それに相応しい以上のマナーを身に付けているのだ。


「私たちは平民ですから、ためらう必要なんてありませんよ? それに要らないなら私が貰います!」


 エリスはラインハルトの持つ串焼きに一口かぶり付き、美味しそうに食べる。

 ラインハルトはそれを見て驚き、おもわず笑ってしまう。

 そして自分だけが躊躇っているのが馬鹿らしくなり、串焼きに思いっきりかぶり付く。


「うん、美味しい! こんな食べ物が、この国にあったのですね……」


 貴族の普段は、一流の料理人が調理した上品な食べ物しか食べない。

 だからこそ庶民的で大雑把な、ガツンと旨味を感じる料理など口にしないのだ。


「おお、兄ちゃん、いい食べっぷりだねぇ! これもオマケしてあげよう!」

「いいのか?」

「ああ、それだけ美味しそうに食べてもらえると、この商売をして甲斐があるってもんよ!」

「そうか、有難う」


 思いっきりかぶり付き頬を膨らましたラインハルトを見て、店の店主が更に香りの強い香草を使った串焼きを手渡してくる。

 そしてラインハルトは食べ終わった串から、そちらに持ち変えてかぶり付く。


「うん、旨い!」


 ラインハルトの良い食べっぷりを見ていると、不思議と物凄く美味しそうに見えるのだ。

 エリスもつられて串焼きにかぶり付く。

 そしてエリスとラインハルトは食べ歩きを始めるのだが、その姿を行き交う人達が見る。

 それを見た人達が出店に向かい、店主はてんてこ舞いになったことを二人は知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ