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生活の糧を考える


 私はオルタスの町の新しい家で、一夜を過ごした。

 藁を敷き詰めた上に布を敷いただけのベッドだったけれども、以外と普通に眠れるものだ。

 移動と掃除で疲れていたこともあるのだろうけどね。


「おはよう、ラインハルト。朝が早いのですね?」


 私が目覚めた時には既に家の中にラインハルトの姿は無く、家の外で剣の素振りをしていたのだ。


「おはよう、エリス。昨日は良く眠れましたか?」

「ええ、良く眠れたわ。それで、ラインハルトは何故に剣の訓練をしているの?」


 ただの執事であるラインハルトが、剣技を磨く必要などないはずなのだが。


「これからは私がエリスを守らなくてはいけないからね。それに私は、幼少期から剣の訓練を行っていたのですよ」

「へぇー、そうだったのね」


 昔からラインハルトの事を知っているが、知らない一面があるのだと驚く。

 でも一体、私を何から守るのかしら?


「王都の中と違って、ここは外と隣接しています。いつ魔物が襲ってくるかもしれませんので、気を付けて下さいよ?」

「そ、そうでしたわね…………いえ、勿論、分かっていましたわよ!」


 魔物とは魔力を持ち進化した動植物のことだ。

 そして何と言っても魔物は人と遭遇すると襲ってくる特性がある。

 だからこそ魔物から命を守るために、平民は強い魔力を持った貴族の庇護に入るのである。

 そして国民が庇護に入る最たる相手は国であり王族であるのだ。

 しかしその恩恵は王都である国の中枢から離れれば離れるほど少なくなり、ここのような辺境の町では魔物がいつ襲ってきてもおかしく無いのである。


「……忘れていたのでしょう、エリス?」

「そ、そんなわけないでしょう! そんなことより、早く帰ってきなさい。朝御飯にしますわよ」

「そうですか、では直ぐに準備を……」

「あら、もう支度は済んでますわよ。だから貴方を呼びに来たのです」


 多くの食料は用意してこなかったので簡単な朝食だが、それぐらいであれば本当に朝飯前だ。


「これをエリスが用意してくれたのですか?」

「ええ、口に合えば良いのだけれども」

「……うん、美味しいね!」

「それは良かった」


 久々の料理だったから心配だったけど、ラインハルトの口に合って良かった。

 限りある食料しかなかったので、本当に簡単なものしか作れなかったので良かった。

 でもこれから生活していくためには今ある食材だけでは当然に足らないから買わなくてはいけないのだけれども、独立して生きていくことを選んだのだから、いつまでも家のお金に頼る訳にもいかない。

 なので自分たちでお金を稼ぎ食材を買うか、自分たちで野菜を育てたりしないといけないのだけれども……。


「ねぇ、ラインハルトは何をして生活の糧にしたらいいと思う?」


 新しい仕事を始めるにしても、何を始めるべきか悩む。

 千尋として生きてきた時も普通に会社勤めだったので、コレといった手に職があるわけでもない。


「エリスは何かやってみたいことは無いの?」

「そうね…………カフェを開くとかどうかしら?」


 何か新しいことを始めるにしても、あんまりにも忙しいのは却下だ。

 カフェで馴染みの客だけを相手にするぐらいで、コーヒーを飲みながらノンビリと過ごしたい。

 それにこの世界の料理には不満があったから、色々と試したいと思ってた所なんだよね。


「いいと思いますよ。エリスが決めたなら、きっと上手く行きますよ」

「あ、ありがとう。でも、そんなに信じられても逆に心配になるというか……」

「なら、他のことにしますか? せっかく魔力があるのだから、冒険者になるという手もあるのですよ?」

「お、お断りします!」


 冒険者は魔物と戦うことが主な仕事の人たちだ。

 貴族で無くても魔力を持っている人はいて、そういう人たちが冒険者になり魔物と戦っているのだけど、当然に命の危険も有る。

 だけどそんな危険なことなんて、普通にしたくないに決まっているでしょ。


「では、やはりお店を開くのですね?」

「ええ、そうするわ。でも冒険者相手に商売をするというのも、良いかも知れないわね」


 冒険者は危険な仕事であるが故に、普通の人たちよりも遥かにお金を儲けている。

 彼らなら高い商品も買ってくれるだろうから、利益を得やすい筈だ。


「それなら薬師となってポーションを作るのもいいでしょうね」


 魔法の力を込めた薬であるポーションは冒険者にとっての必需品だ。

 治癒魔法は高度で扱える人は少ないが、ポーションであれば服用するだけで扱える。

 魔力が無いと作れないから高価な代物なのだけれども、それを私が作れればこれから生活費の心配などなくなるだろう。

 でも一からポーションの作り方を学ばなくてはいけないのは、結構大変そうなんだよね。


「まぁポーション作りは置いといて、直ぐに始められるカフェの準備をしてみましょう」

「分かりました。それでは道具の手配は私がしますので、エリスは何を作るか考えていて下さい」

「ええ、宜しく頼むわね」


 ラインハルトは道具や食材の調達に出掛け、私は家の片付けを再開する。

 こうして私のオルタスの町での新しい一日が始まるのであった。


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