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異変


 ポーションの販売場所を失った私たちは失意の中で、場所を借りていたお店から荷物を撤去し自宅に帰る。


「一体どうしちゃったんだろう……」


 昨日までは何事もなく使わせてくれていたし、また明日と挨拶もしてくれたぐらいだ。

 それなのに今日になっていきなり、何の前触れもなく拒否されてしまうなんて意味がわからない。

 何か良からぬものが動き始めたのかもしれないし、これから私たちはどうすれば良いのだろうか……。


「エリスさん、考えても売ることはできないですよ。場所がなくても持ち運んで売りましょう!」

「そっか……いや、そうよね。ニコちゃんの言う通りだよ。今の私たちに出来ることは売ることだけだもんね」


 家に留まっていてもポーションが売れるようになる訳ではない。

 場所を使わせて貰えなくなった理由が分からなくても、ポーションを売ることが出来るのであれば問題ない。

 そう思ってラインハルトとエレンにも手伝って貰い幾らかのポーションを持って出掛けたのだけれども……。


「ポーションは要りませんか?」

「ポーション? もう持っているから要らないよ」

「そうですか……またの機会にお願いします」


 町の中で新たに場所を提供してくれる人を見つけられない以上は、これまでのニコのように町の外で販売を行うことにした。

 しかし何人にも声を掛けるのだけれども何故か全員が既にポーションを充分に所有していて、誰も私たちのポーションを買ってくれないどころか興味すら示してくれないのだ。


「どうしてなんだろう……」


 町の外なので既に購入している人も多いと思うから、いつもより安くしたにも関わらず誰もが購入の意欲を示してくれない。

 更にそれは依頼を終えて町に帰ってくる冒険者も同じなのだ。

 ニコはこれまで同じように売ってきたけど、こんなに全く売れないなんて経験はしたことがないらしい。


「どう考えてもおかしいよね?」


 町の外なので護衛の為にも付いてきて貰っているラインハルトに聞く。


「ああ、こうも同じ反応を見せるというのは不自然だ。何かがあったとしか思えないね」

「そうだよね……私たち以外の薬師さんたちはどうしてるんだろう?」


 この状況が私たちだけのものなのか、それとも町全体で起こっていることなのか。

 何故にポーションが売れなくなったのか今は理由がわからないので、今は少しでも手がかりが欲しい。


「……分かった。少し調べてみるよ。エリスたちだけでここに残ると危ないから、一旦家に戻っておいてくれるかい?」

「ええ、そうね……残念だけど、今はそうするしかないよね……」


 ポーションを売ることが出来ず持って帰らないといけないのは、作製者とし寂しいことだ。

 だけどニコも不安そうにしているので、私までもがその姿を見せるわけにはいかない。ニコをそっと側に引き寄せ抱き締める。


「大丈夫だよ。きっと直ぐにまた売れるようになるから」

「うん……」


 売れずに残ったポーションを持って不安に苛まれながら家に帰り、他に出来ることもないのでラインハルトの報告を待つことにする。

 黙って待っていると心まで暗くなってしまいそうなので、お菓子でニコとエレンの不安を和らげながら待つ。

 そして数時間待っていると、町の中を見て回ったラインハルトが帰ってきた。


「どうだったの?」

「……どうやら他の薬師も同じ状況だったみたいだ。いきなりのことで皆、何が起こっているのか分かっていないようだった」

「そう、なんだ……つまりポーションを売っているのは……」


 町の他の薬師も売ることが出来ていない、それなのに冒険者はポーションを持っている。

 つまりポーションを再び独占販売しているのは冒険者ギルドであるということだろう。


「……明日、冒険者ギルドに向かってみましょう」

「ええ、そうしましょう」


 どういう理由で冒険者ギルドがポーションの独占販売を行っているのか分からないし、その方法も分からない。

 けれどもギルドが不正を働いて独占をしているのであれば見逃すことはできないし、それは国王からの王命に違反していることにもなる。


 このオルタスの町で何か良からぬことが動き出したようで、私たちは身を引き締めるのであった。

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